「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の教育的効果に関する一考察

−中学生の「生きる力」をどのように育んだか− (平成10年度兵庫県立教育研修所研究紀要から)

心の教育総合センター
義務教育研修課 主任指導主事 古田猛志
高校教育研修課   指導主事 小林 宏

要旨

 心の教育総合センターでは、「トライやる・ウィーク」を体験した中学2年生に対し、体験前・後に心理学的テストバッテリーを実施・分析することによって、その教育的効果の測定を行った。
 測定に用いた心理学的テストバッテリーは、「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」である。
いずれも中学生の「生きる力」の根幹をなすものと考えられる。
 分析の結果、「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」の各合計得点ともに、事後において増加し、同事業の体験が中学生の「生きる力」を高めることがわかった。

はじめに
 文部大臣からの「幼児期からの心の教育の在り方について」の諮問を受けて、第16期中央教育審議会は、「新しい時代を拓く心を育てるために−次世代を育てる心を失う危機−」注1)を答申した。
この答申の内容の骨子は、次世代を担う子どもたちの教育の在り方として、学校教育にのみ頼ることなく、幼児期からの家庭教育と地域の教育力を高めることと、知育に偏らない生きる力を育む「心の教育」の重視にあると理解される。
 また、本県においては、一昨年の神戸市須磨区の小学生連続殺傷事件後、河合隼雄氏を座長とする「心の教育緊急会議」を開催し、「現在の子どもたちが置かれている状況をどのようにとらえるか、また、子どもたちの心の成長をどのように図って行くかなど」1)の観点からの検討がなされた。
報告書は「心の教育の充実に向けて」と題され、昨年10月に公表された。その提言の一つとして、「中学校における長期体験学習の導入」1)がある。
 本県教育委員会義務教育課は、この提言を受け、県下の中学2年生を対象に、主に11月を中心とする時期に一週間の体験活動の実施を提唱した。これが「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」である。
その目的は「時間的、空間的なゆとりを確保し、地域や自然の中で、生徒の主体性を尊重した様々な活動や体験を通して、豊かな感性や創造性などを自ら高めたり、自分なりの生き方を見つけることができるよう支援するなど、『教』より『育』を中心にすえた『心の教育』を推進する。このことにより、ともすれば知育に偏りがちな教育を是正するとともに地域に学び、共に生きる心や感謝の心を育み、自律性を高めるなど、『生きる力』を育成することが期待される」2)としている。
 心の教育総合センターでは、この「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」を「心の教育」の先駆的プログラムとして捉え、同体験学習を体験した中学2年生に対し、体験前・後に心理学的テストバッテリーを実施・分析することによって、その教育的効果の測定を行い、同事業の在り方を検討する一助になることを目指した。

1 調査の内容

(1) 調査対象者
 県下7地域20校の中学2年生(102クラス)2780名(阪神地域3校、丹有地域3校、東播磨地域3校、 西播磨地域3校、但馬地域2校、淡路地域3校、神戸市3校)

(2) 調査の時期
 平成10年11月〜12月

(3) 調査内容及び方法
 「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の社会体験の結果得られる主な「生きる力」として、以下の三つの内容(調査項目)を想定した。
 すなわち、自己に対する自信の基礎をなすと考えられる「自己効力感」、中学生なりの職業的発達・進路成熟をあらわす「勤労観」、人間の発達を個人化と社会化の2領域から測定する「個人志向性・社会志向性」の三つの内容(調査項目)である。
 この事前・事後における変化を見るために、上記の調査対象者に「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」の三つの調査項目を中心とするほぼ同様の調査用紙を2度実施した。調査日時は「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」実施週の前週後半に事前調査を、実施週の次週前半に事後調査を実施するように、各中学校に依頼した。
 以下に、今回の調査に用いた「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」の三つの質問紙について簡単にふれておきたい。

@ 「自己効力感」
 「自己効力感」という概念は、もともとバンデュラ(Bandura,A.,1977)注2)によって提唱された社会的学習理論あるいは社会的認知理論の中核をなす概念である。
 バンデュラは、「期待」という概念を結果期待と効力期待の二つに分けて考えている。結果期待とは、ある課題を遂行することによって、このような結果が得られるであろうという期待である。一方で、効力期待とは、ある課題がこの程度はできるという期待であり、きわめて平易に言えば、課題遂行にあたっての「自信」であると言える。バンデュラは、臨床心理学の立場から、行動の変容にとって、結果期待や過去の経験よりも効力期待が重要であると指摘している。
 つまり、このように行動すれば良い結果が得られる(結果期待)とわかっていても、あるいは過去に同じような行動によって良い結果を得たこと(過去の経験)があったとしても、現在このように行動することが自分自身が可能であるという自信(効力期待)がなければ、当の行動は達成されないのである。
 簡単に言うと、このような効力期待の自己認知が自己効力感だということができる。
 ところが、バンデュラはこのような効力感をある課題に特有な信念としたが、その般化(一般化)をも示唆している。つまり、ある課題達成において形成された自己効力感は、他の課題達成についても役立つということである。この点を強調したシェラーら(Sherer,M.et al.,1982)は、一般化された効力感の概念を構成した。このような自己効力感を測定する質問紙を開発し、自己効力感の測定を行い、実証的な研究をおこなった。
 我が国においては、桜井茂雄3)によって児童用に開発された質問紙があり、シェラーの質問紙を基として作成されている。本調査においては、桜井の質問紙を使用した。
 今回の調査で、事後において有意(統計的に意味のある変化)に得点が高まれば、中学生が単に社会的に体験した領域において自信を深めたということのみならず、自己効力感の般化の特性から、他の課題達成にも自信を深めた可能性を示唆するものであると考えられ、中学生の「生きる力」の一側面の成長であると考えられる。

A 「勤労観」
 人間の一生は、自らが選んだ「職業」と切り離して考えることはできない。「職業」の選択や決定自体が人生の一大課題であり、生涯発達の観点からは、生涯の発達において、自らの選んだ「職業」を通しての発達の占める割合が大きい。
 したがって、中学生や高校生の段階から、自己(興 味・関心、能力・適性)と現実の職業を相対的に見つめることが肝要であり、中学生や高校生に必要な「生きる力」の一つであるということができる。
 文部省(1977)も、進路指導を職業的発達あるいは進路成熟の観点から以下のように述べている。すなわち、「『人が進路を選択し、それを実現し、そこで適応する。』ことは、正に『その人が自己概念を形成し、これを現実吟味し、必要によって修正し、このように明確になった自己概念を実現することである。』」4)と、職業領域における自己概念およびその発達の重要性を指摘している。
 当然、「自己概念の形成から実現までのこのような過程は、中学校時代とか、高等学校時代のような短い期間に行われ、かつ完結してしまうものではなくて、青年期から老人期まで−個人の職業生活の全生涯にわたって−その人その人の内在的素質と内外の経験に基づく学習と環境の接点からの影響のもとに、その発達段階に応じて、繰り返される(ただし、螺旋的に深められながら)ものである」4)。
 このように、職業的発達や進路成熟は、自己概念を鍵概念とする生涯発達の観点から捉えられるが、当然、このような職業領域における自己概念の萌芽は、年少時に求められなければならない。
 内藤勇次5)など、小学校における進路指導の導入を提起する指摘もあるが、少なくとも中学生の段階からの上述の意味での進路指導が肝要となろう。
 文部省(1977)も、中学生・高校生の進路指導の核心について、「進路指導の要諦は、生徒が自己概念の職業的側面を伸ばすように指導・援助することであると要約してもよいと考える」4)としている。
 上記の観点から、高校生の勤労観を測定する質問紙を作成したのが、岡田忠義6)である。
 この質問紙は「職場の人間関係の因子」「自己実現の因子」「社会的自己実現の因子」「社会的ステータスの因子」の4下位領域からなり、30項目の質問項目から構成されている。今回の調査にあたり、昨年6月の「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」先行実施校7校700名の中学2年生に先行実施した「勤労観」の調査結果を因子分析(バリマックス回転)などの手続きを行い、「勤労観−中学生用短縮版−」16項目を作成し、この質問紙を用いた。
 今回の調査で、事後において有意に得点が高まれば、文部省(1984)の提唱する「体験的・探索的な学習を重視した進路指導」7)の成果を実証的に支持することにもなると考えられる。

B 「個人志向性・社会志向性」
 人間の発達は、個人化と社会化という2側面から捉えられる。
 一方で個人の内面に関心が向き個性を発達させようとする個性化と、社会に関心が向き、社会の価値や規範・ルールを内在化していこうとする社会化は、両者の間に、時には対立や葛藤を繰り返しながらも、両者を共存させる方途を模索しながら成長していくことが仮定される。
 「人間の発達とは、この2つの過程−社会生活に適応していく社会化過程と、独自のパーソナリティを形成していく個人化過程−の単なる加算ではなく、両者がときには対立し、ときには葛藤を生じつつも、相互に関連を持ちながらより統合的な方向へと変化していくプロセスである」8)との考えから、「個人志向性・社会志向性」の概念を提起し、その両側面からの発達を測定する質問紙を開発したのが伊藤美奈子9)である。
 伊藤によれば、「社会志向性とは、社会適応や文化適応を終局点とし、他者あるいは社会の規範に則った生き方への志向性を意味する」「一方個人志向性とは、自分独自の基準を尊重し、個性を活かした生き方への志向性であり、その終局には"自己実現"(Maslow,1954)注3)という状態が想定される」8) としている。
 伊藤は、中学生から40歳代の男女に質問紙を実施し、その発達を横断的に研究している。その結果、年代を追うにつれて漸進的な発達が見られるが、性差があることなどを見いだしている。
今回の調査で、事後において有意に得点が高まれば、このような生涯発達の基礎が形成されると考えられる。

2 調査の結果と考察

(1) 「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志 向性」得点の「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験、事前事後における変化
 表1は、今回の調査の対象となった2780名の中学生の、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験事前事後の「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」得点の平均と標準偏差およびその差である。
 なお、「自己効力感」質問紙は、11項目、5件法を用いたため合計点は55点満点である。
 「勤労観−中学生用短縮版−」は、4つの下位因子を持ち、それぞれに4項目ずつ16項目からなる、5件法、合計得点は80点満点の質問紙である。
「個人志向性・社会志向性」質問紙は、「個人志向性」、「社会志向性」の2つの下位因子を持ち、それぞれに8項目、9項目計17項目からなる、5件法、それぞれに合計得点は40点満点、45点満点の質問紙である。

表1 事前・事後の「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」得点の平均と標準偏差およびその差

事前平均 事後平均 平均差
自己効力感 33.49(5.17) 34.58(5.35) 1.09
勤労観 57.04(6.04) 58.04(6.71) 1.00
 職場人間関係の因子 17.31(2.18) 17.34(2.30) 0.03
 自己実現の因子 14.25(2.64) 14.67(2.82) 0.42
 社会的自己実現の因子 12.54(2.65) 12.99(2.82) 0.45
 社会的ステータスの因子 12.94(2.72) 13.05(2.77) 0.10
個人志向性 25.43(4.41) 25.84(4.23) 0.41
社会志向性 31.05(4.61) 31.48(4.79) 0.44

                                   ( )内は標準偏差

表1から、生徒個々のレベルでは、「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」いずれの合計得点も増加を示している。このように、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験は、生徒の自信を深め、個性を発達させようとする等、生徒個々の「生きる力」の育成に効果があったということができる。

(2) クラスごとの、得点水準別に見た、「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」合計得点の変化
 それでは、上記の事前事後の平均点の差は統計的に有意な(統計的に意味がある)変化であったのだろうか。またもともと、たとえば「自己効力感」が低い場合、高い場合それぞれに効果があるのだろうか。この様な場合統計的には、個々のデータによる分析を用いず、各クラスの平均点をサンプルとする分析を行う方が、全体的な特性や属性をよくあらわすと考えられる。また、そうする方が、分散分析注4)における有意水準の判定も妥当である。したがって、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の効果をみるため、次のように分析を行った。
 各中学校(20校)のクラス(102クラス)ごとの事前・事後の合計得点の平均点をサンプルとした。また、もともと「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」合計得点の高い群クラス(高得点群)、中位のクラス群(中得点群)、低いクラス群(低得点群)の3群(102クラスの平均点を高低の順に並べ、それぞれ34クラスごとの群)を設け、事前・事後の時期(2)×群(3)の2要因分散分析を行った。この体験による変化(効果)およびその体験前の到達レベルによる変化の違いを考察するためである。
以下、@「自己効力感」A「勤労観」B「個人志向性・社会志向性」の分析結果を、Cにおいて、この項の考察を記した。

@ 「自己効力感」

表2に、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験の事前における「自己効力感」合計得点の高・中・低得点群の平均点と標準偏差、さらに体験の事後におけるそれぞれの群の平均点と標準偏差をあらわした。表3は、これらの分散分析結果をあらわしたものである。

表2 時期・群ごとの「自己効力感」の各クラスの平均合計得点の平均点と標準偏差(S.D.)

時期    
事前実施 高得点群 平均 34.94
(N=34) (S.D.) ( 0.63)
中得点群 平均 33.48
(N=34) (S.D.) ( 0.27)
低得点群 平均 32.17
(N=34) (S.D.) ( 0.71)
事後実施 高得点群 平均 35.74
(N=34) (S.D.) ( 1.23)
中得点群 平均 34.65
(N=34) (S.D.) ( 0.97)
低得点群 平均 33.42
(N=34) (S.D.) ( 1.06)

                 (Nはサンプル数を示す。以下同じ)

表3 「自己効力感」合計得点の分散分析結果

  SS df MS
A(時期) 58.86 1 58.86 129.19 ***
B(群) 220.32 2 110.16 100.03 ***
A*B 1.92 2 0.96 2.11  
Total 435.24 203      

*p<.05 **p<.01 ***p<.001                     SS:偏差平方和 df:自由度 MS:平均平方
* は95%の確率で変化があったといえる。
** は99%の確率で変化があったといえる。
*** は99.9%の確率で変化があったといえる。

 分散分析結果を見ると、時期×群の交互作用(時期によって群間に変化のパターンの違いが見られること)は見られなかった。また、時期の主効果は有意であることがわかる。このことは、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験の事前と事後の合計得点結果が、全体として有意に変化したことをあらわしている。つまり、事後において有意な得点の増加が見られたことがわかった。
 また、群の主効果が有意であった。多重比較の結果、事前においても、事後においても3群間に有意な差のあることがわかった。
このことは、体験学習の効果に群による差のないことを意味する。つまり、時期の主効果との関係から、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の事前における「自己効力感」の高得点群も中得点群も低得点群も、一様に体験の事後において得点を高める結果となったということができる。

A 「勤労観」
表4に、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験の事前における「勤労観」合計得点の高・中・低得点群の平均点と標準偏差、さらに体験の事後におけるそれぞれの群の平均点と標準偏差をあらわした。表5は、これらの分散分析結果をあらわしたものである。

表4 時期・群ごとの「勤労観」の各クラスの平均合計得点の平均点と標準偏差(S.D.)

時期    
事前実施 高得点群 平均 58.81
(N=34) (S.D.) ( 1.02)
中得点群 平均 57.02
(N=34) (S.D.) ( .31)
低得点群 平均 55.47
(N=34) (S.D.) ( .54)
事後実施 高得点群 平均 59.21
(N=34) (S.D.) ( 1.57)
中得点群 平均 58.16
(N=34) (S.D.) ( 1.47)
低得点群 平均 56.90
(N=34) (S.D.) ( 1.33)

表5 「勤労観」合計得点得点の分散分析結果

  SS df MS
A(時期) 50.20 1 50.20 56.38 ***
B(群) 271.94 2 135.97 75.86 ***
A*B 9.51 2 4.76 5.34 **
Total 597.25 203      

*p<.05 **p<.01 ***p<.001

 分散分析結果を見ると、時期×群の交互作用が有意であることがわかる。そこで、各要因の単純主効果を分析したところ、時期の単純主効果では、低得点群および中得点群においては有意な変化がみられた(低得点群:F,1,38.83,p<.001、中得点群:F,1,25.13,p<.001)が、高得点群(F,1,3.10,p<.10)は有意な変化ではなかったことがわかった。
 また、群の単純主効果は、各時期ごとに有意であったので、さらに下位検定(ライアン法:有意水準1%)をおこなったところ、事前においても事後においても、各群間に有意な差のあることがわかった。つまり、事後においても、高得点群>中得点群>低得点群という関係に変化はなかったと言える。  
したがって、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の事前において「勤労観」の低得点群や中得点群は、一様に体験の事後において得点を高める結果となったが、もともと高得点であった群の得点の増加はあまり見られなかったということができる。

B 「個人志向性・社会志向性」
ア 「個人志向性」
表6に、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験の事前における「個人志向性」合計得点の高・中・低得点群の平均点と標準偏差、さらに体験の事後におけるそれぞれの群の平均点と標準偏差をあらわした。表7は、これらの分散分析結果をあらわしたものである。

表6 時期・群ごとの「個人志向性」の各クラスの平均合計得点の平均点と標準偏差(S.D.)

時期    
事前実施 高得点群 平均 26.52
(N=34) (S.D.) ( 0.59)
中得点群 平均 25.43
(N=34) (S.D.) ( 0.23)
低得点群 平均 24.43
(N=34) (S.D.) ( 0.63)
事後実施 高得点群 平均 26.65
(N=34) (S.D.) ( 0.91)
中得点群 平均 25.82
(N=34) (S.D.) ( 0.51)
低得点群 平均 25.13
(N=34) (S.D.) ( 0.80)

表7 「個人志向性」合計得点の分散分析結果

  SS df MS
A(時期) 8.41 1 8.41 43.41 ***
B(群) 110.92 2 55.46 82.28 ***
A*B 2.70 2 1.35 6.96 **
Total 207.96 203      

*p<.05 **p<.01 ***p<.001

 分散分析結果を見ると、時期×群の交互作用が有意であることがわかる。そこで、各要因の単純主効果を分析したところ、時期の単純主効果では、低得点群および中得点群においては有意な変化がみられた(低得点群:F,1,42.29,p<.001、中得点群:F,1, ,13.52,p<.001)が、高得点群(F,1,1.52,n.s.)は有意な変化がみられなかったことがわかった。
また、群の単純主効果は、各時期ごとに有意であったので、さらに下位検定(ライアン法:有意水準1%)をおこなったところ、事前においても事後においても、各群間に有意な差のあることがわかった。つまり、事後においても、高得点群>中得点群>低得点群という関係に変化はなかったと言える。  
したがって、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の事前において「個人志向性」の低得点群や中得点群は、一様に体験の事後において得点を高める結果となったが、もともと高得点であった群の得点の増加はあまり見られなかったということができる。

イ 「社会志向性」
表8に、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験の事前における「社会志向性」合計得点の高・中・低得点群の平均点と標準偏差、さらに体験の事後におけるそれぞれの群の平均点と標準偏差をあらわした。表9は、これらの分散分析結果をあらわしたものである。

表8 時期・群ごとの「社会志向性」の各クラスの平均合計得点の平均点と標準偏差(S.D.)

時期    
事前実施 高得点群 平均 32.46
(N=34) (S.D.) ( 0.66)
中得点群 平均 31.06
(N=34) (S.D.) ( 0.31)
低得点群 平均 29.69
(N=34) (S.D.) ( 0.53)
事後実施 高得点群 平均 32.58
(N=34) (S.D.) ( 0.92)
中得点群 平均 31.55
(N=34) (S.D.) ( 0.89)
低得点群 平均 30.41
(N=34) (S.D.) ( 0.96)

表9 「社会志向性」合計得点の分散分析結果

  SS df MS
A(時期) 10.06 1 10.06 23.54 ***
B(群) 207.49 2 103.75 142.04 ***
A*B 3.05 2 1.53 3.57 *
Total 335.23 203      

*p<.05 **p<.01 ***p<.001

 分散分析結果を見ると、時期×群の交互作用が有意であることがわかる。そこで、各要因の単純主効果を分析したところ、時期の単純主効果では、低得点群および中得点群においては有意な変化がみられた(低得点群:F,1,20.72,p<.001、中得点群:F,1, ,9.32,p<.001)が、高得点群(F,1,1.52,n.s.)は有意な変化がみられなかったことがわかった。
 また、群の単純主効果は、各時期ごとに有意であったので、さらに下位検定(ライアン法:有意水準1%)をおこなったところ、事前においても事後においても、各群間に有意な差のあることがわかった。つまり、事後においても、高得点群>中得点群>低得点群という関係に変化はなかったと言える。
したがって、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の事前において「社会志向性」の低得点群や中得点群は、一様に体験の事後において得点を高める結果となったが、もともと高得点であった群の得点の増加はあまり見られなかったということができる。

C 考察
以上、概観したように、「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」合計得点は、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の事後において増加している。このことは「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」での社会的体験学習が、「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」に代表される中学生の「生きる力」の育成に効果のあることを示唆するものである。
また、102クラスの平均点を用いた分散分析においては、クラス単位で見ても、事後において「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」得点が高まり、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の意義が実証されたものと思われる。
また、事前得点のクラス平均点レベルを高得点群・中得点群・低得点群に分けて分析要因に加えたことにより、それぞれの交互作用の結果から以下のことがわかった。
すなわち、「自己効力感」は、高・中・低得点群ともに得点を高めたのに対し、「勤労観」や「個人志向性・社会志向性」においては、中・低得点群においては得点を高めたが、高得点群の得点は増加しなかったということである。
低得点や中得点群のクラスにおいて、このような社会体験学習が効果的であることは、教育的にも有意義なことであるが、高得点群の「効果」はなかったのであろうか。この点について、今後の課題として以下の点についてふれておきたい。
岡田は、高校生の「勤労観」の発達について、高校在学時から卒業半年後までを縦断的に研究している。その結果、高校在学時「勤労観」高得点群において、統計的に有意な変化ではないが就職後得点が減少することを見いだしている。もともと高校在学時の「勤労観」は予期的社会化(「働く」以前からの「働くということへの意識」)の一種であり、実際に「働いてみて」彼我に対する「現実吟味」を行い、また「現実」に即した「勤労観」を再構築していくものと考えられる。岡田における高得点群の就職後の変化は、上記のような「現実吟味」のプロセスであると考えられる。きわめて一般化して言えば、「期待」や「理想」の高いものほど「現実吟味」が必要となろう。
本調査における高得点群は、事後において得点の減少は見られなかったが、同種のプロセスが生じたのではないかと仮定できる。今後感想文や事後作文等との関係を比較するなどの研究も必要であろう。高得点群の感想には「現実は思っていたほど、甘くはなかった」等の記述が仮定される。また、この領域の発達は、決して非可逆的なものではない。「その人その人の内在的素質と内外の経験に基づく学習と環境の接点からの影響のもとに、その発達段階に応じて、繰り返される(ただし、螺旋的に[下線は筆者による]深められながら)ものである」7)ならば、一時的な停滞や得点の減少も積極的な意味をも持つとも考えられる。今後、上述した方法や「勤労観」下位因子得点の分析、性差の要因を加えた分析方法等を勘案して明らかにしていきたい。
一方「個人志向性・社会志向性」について、伊藤は、「人格発達の過程は社会化か個人化かという二分法に還元されるものではなく、またこれらは同一線上の変化でもない。この両者が相互補完的に関わりながら質的に変化していく過程であるといえる」8)としている。「勤労観」同様、一層緻密な要因計画の下での課題としたい。

(3) 体験内容別に見た「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」合計得点の変化
「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験は個々の生徒にその体験する内容の希望に基づいて、さまざまな分野において実施されている。ここでは、どのような分野の社会体験が、生徒のどのような心の変化(「生きる力」への影響)を生じさせているかを見るために、体験内容別に「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」について、体験前・後の合計得点の変化(差)を調べることにした。
次の表10は、それぞれの体験内容群ごとの「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」合計平均得点の差(事後得点−事前得点)と、それぞれの体験群の変化をまとめたものである。

表10 体験ごとの「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」の事前・事後合計平均点の変化(差)

自己効力感 勤労観 個人志向性 社会志向性
生産(N=427) 0.9 0.3 0.2 0.0
サービス(N=931) 1.0 1.0 0.3 0.5
保育(N=524) 1.6 1.5 0.8 0.8
医療(N=80)  1.1 2.1 1.0 0.9
福祉(N=189) 1.2 0.7 0.5 0.4
文化(N=185) 0.5 0.6 0.2 0.0
公共(N=298) 0.8 1.1 0.5 0.5
その他(N=146) 0.8 1.3 0.1 0.5

(体験内容群の詳細は資料「A体験内容表」を参照)

 これらの結果は、各群のサンプル数も大幅に異なり、あくまで試行的な比較ではあるが、今後社会的体験活動をプログラム化する際に参考となろう。

@ 自己効力感
「自己効力感」は、ほとんどすべての体験群において変化がみられた。特に「保育」「福祉」「サービス」等の体験群において顕著である。幼児やお年寄りやお客などに直に関わって、自分の関わりが相手の反応としてダイレクトに返ってくることが影響しているとも考えられる。

A 勤労観
「勤労観」は「医療」「保育」「公共」等の体験群において変化が顕著であった。下位領域得点別に見ると、「勤労観」は「自己実現の因子」「社会的自己実現の因子」の2下位領域得点の増加が顕著であり、「医療」等、これらの体験は短い体験期間でも「自分を精一杯生かせる仕事とは何か」「働くことを通して社会や人のために役立つとはどういうことか」を考える機会の多い体験であると考えられる。

B 個人志向性・社会志向性
「個人志向性・社会志向性」は、「医療」「保育」等の群の変化が顕著だった。これらの体験は、「勤労観」同様に、短い期間の体験でも社会への関心と、社会体験を通じて自らが得た体験をもとに「自分自身」を振り返ったり考えたりする契機を得やすい場であったのではないかと考えられる。

(4) 「単独体験群」と「複数体験群」の比較
今回の「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の期間中、同一の体験を継続した群と、複数の体験を体験した群との間で、どのような変化の差があるかを、試行的に検討することは、今後のこのような社会体験活動のプログラム化の参考となろう。
表11は、一週間をとおして同一の体験(たとえば、「販売」なら「販売」)を継続して体験した群(「単独体験群」とする)と、二つ以上の体験内容(たとえば、「生産」と「文化活動」等)を体験した群(「複数体験群」とする)の「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」合計得点の平均点の変化(事後合計平均点−事前合計平均点)を示した。 

表11 群ごとの「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」の事前・事後合計平均点の変化(差)

  自己効力感 勤労観 個人志向性 社会志向性
単独体験群(N=2455) 1.1 1.1 0.4 0.5
複数体験群(N=325) 1.0 0.4 0.2 0.0

 これらの結果は、サンプル数も異なり一概に比較することはできないが、平均点の変化だけを見ても、「自己効力感」の変化はあまりかわらない。しかし、社会との関わりや自らの在り方、そして将来においてどのように職業をとおして社会と関わっていくかという「勤労観」や「社会志向性」など、社会的発達ないし社会性の発達に関する領域おいては、単独体験群の方の変化が大きい。自らの問題として考える機会が多かったのではないかと推測される。
いずれにせよ、今後このような社会的体験学習を押し進めて行くためには、このような実証的なデータの積み重ねが必要となろう。

3 まとめ

本稿においては、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の教育的効果を測定することを目的とした。しかし、このような調査研究は、「すべての効果」を測定することは不可能である。したがって、本稿においては、その指標を、中学生に必要な「生きる力」との観点から、「自己効力感」「勤労観」「個人志向性・社会志向性」の三つの切り口に求めた。
その結果、2780名のそれぞれの平均得点が、すべて
事後において増加するという結果を得た。このことから、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」に参加した中学生は、「自己に対する自信を深め、『働く』ということを身近な問題として捉え、自己にも社会にも目をむけ始めた」と推測することができる。また、継続的な社会体験は社会的な自己認識を高めたと言える。
また、クラス平均点を用いた分析では、「自己効力感」においては、もともと「自己効力感」の低い群も中位の群も高い群も、一様に得点の増加を示すことがわかった。一方、「勤労観」と「個人志向性・社会志向性」においては、もともと得点の低い群、中位の群にその効果が顕著であることがわかった。
 ところで、「生きる力」や「在り方、生き方」の教育や文部省の言う職業的発達や進路成熟の観点からの進路指導は、このような社会的体験学習を通してのみ行われるわけではない。通常のクラス単位での授業を通しても行われる教育の営みでもある。また生徒は、通常クラス単位での授業の中で互いに影響を与え、受けながら成長している。
 クラスを単位として分析することによって、どのような傾向を持つクラスに「トライやる・ウィーク」が効果的かを知ることもできた。また、今後の学級経営や「生きる力」を育成する授業等にも、そのデータが活用されると考えられる。また、そのデータは、個々の生徒のデータを基礎としており、今回の分析は基本的に個々の生徒の変化や特性をも映し出すものと思われる。
今後、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」は、文部省の言う「総合的な学習」の流れの中で、単独の社会体験学習ということではなく、教科や特別活動さらに進路指導の全体計画の中に組み込まれ、さまざまな角度からの検討が必要となろう。
 今後の課題として、今回の分析からは捉えることのできなかった「高得点群」における一部「効果」の問題や、男子生徒と女子生徒の性差の問題などが残った。
今後このような課題にも応えることができるよう、継続した研究が必要であると考える。
地域の協力で始まった「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」は、あらためて「地域の教育力」を再認識させる結果となったが、上述したように、学校教育の側においても、このようなデータや分析を参考に、「トライやる・ウィーク」の成果を学校教育の中に一層有効に生かしていくことが望まれるものと思われる。

おわりに

文末とはなったが、今回の調査に際し、初めての取組の忙しい中を調査にご協力いただいた各中学校および中学生のみなさんに、心からお礼を申し上げたい。
また、ご指導いただいた当センターの上地安昭所長(兵庫教育大学教授)、冨永良喜主任研究員(兵庫教育大学助教授)、そして膨大なデータのコンピューターへの打ち込みに、急遽ご協力いただいた上地ゼミをはじめとする兵庫教育大学の大学院生のみなさんに、心からお礼を申し上げたい。
さらに、統計的処理に際しては、本稿の締め切りの迫る中を、兵庫教育大学浅川潔司教授には、時には深夜までご指導を賜った。心から厚くお礼申し上げます。

引用文献
1) 心の教育緊急会議「心の教育の充実に向けて」(1997)
2) 兵庫県教育委員会「地域に学ぶ中学生・体験活動週間『トライやる・ウィーク』−青春への助走−指導の手引き」(1998)
3) 桜井茂雄「自己効力感が学業成績に及ぼす影響」教育心理研究vol.35-2(1987)
4) 文部省「中学校・高等学校 進路指導の手引き−進路指導主事編−」(1977)
5) 内藤勇次「生き方の教育としての学校進路指導」北大路書房(1993)
6) 岡田忠義「高校生の勤労観の変容に関する研究」兵庫教育大学大学院昭和63年度修士論文(1988)
7) 文部省「中学校・高等学校進路指導の手引き第15集 体験的・探索的な学習を重視した進路指導−啓発的経験編−」(1984)
8) 伊藤美奈子「個人志向性・社会志向性尺度の作成および信頼性妥当性の検討」心理学研究vol.64(1993)
9) 伊藤美奈子「個人志向性・社会志向性に関する発達的研究」教育心理学研究vol.41(1993)

注1)中央教育審議会答申「新しい時代を拓く心を育てるために−次世代を育てる心を失う危機−」(1998)を参照。
注2)アメリカ人間性心理学の第一人者。独自の欲求階層説をもとに、人間の高次欲求としての「自己実現の欲求」を唱えた。引用文中に引用された1954年の著作は、『人間性の心理学』産業能率短大出版部刊(1971)として邦訳されている。
注3)包括的な社会学習理論の第一人者。学習者自らが遂行し、強化を受けることなく成立する学習を重要視し、モデリング、自己制御、個人・行動・環境の相互的な決定などの概念を提起している。
注4)平均間の差を分散(バラツキの程度を示す量)という統計量を用いて検定する方法。

資料(Appendix)

 A体験内容表

大きな分類 具体的な活動内容
1 生産 農業、漁業、林業、酪農、動物飼育、建築、製造、土木、食品、塗装、左官、園芸、その他
2 サービス 販売、飲食、理容・美容、金融、宿泊、ゴルフ練習場、遊技(ゆうぎ)施設、ガソリンスタンド、スポーツ施設、その他
3 保育 保育園、幼稚園、親子活動、その他
4 病院(医療) 病院、保健所、動物病院、その他
5 福祉 社会福祉施設、老人ホーム、その他
6 文化 絵画、着付け、生け花、ペーパークラフト、陶芸、木工、郷土芸能、報道、文化遺産発掘、コンピューター、音楽、その他
7 公共 絵画、着付け、生け花、ペーパークラフト、陶芸、木工、郷土芸能、報道、文化遺産発掘、コンピューター、音楽、その他
8 その他 美化活動、緑化活動、その他

 B「自己効力感」質問項目
1 何か計画するときには、その計画が必ず実現できると思う。
2 しなければならないことがあるのに、なかなかとりかかれない。
3 失敗しても、最後までやりとげることができる。
4 大切な目標があっても、なかなか実行できない。
5 最後までやりとげるまえに、あきらめてしまうことが多い。
6 めんどうなことでも、しなければならないことなら、やりとげるまでがんばる。
7 何かしようと決めると、すぐにそれにとりかかる。
8 新しく勉強しようとすることがむずかしそうに見えるとはじめからやろうとしない。
9 失敗すると、よけいにやる気がおきる。
10 物事がやりとげられるかどうか、心配である。
11 他人には頼りたくない。
  注)2,4,5,8,10の項目は逆転項目である。

 C「勤労観−中学生用短縮版−」質問項目
1 私が就職して働くとき、仕事は最後までやりとげることが大切である。
2 私にとって働くことは、能力をのばし、個性を発揮することである。
3 私にとって働くことは、社会に奉仕することである。
4 私が就職して働くとき、給料がよければ自分の能力が発揮できなくてもよい。
5 私が就職して働くとき、職場の規則を守ることは大切である。 6 私にとって働くことは、自分自身を向上させるためである。
7 私にとって働くことは、仕事をとおして社会に貢献することである。
8 私にとって働くことは、お金をえることである。
9 私が就職して働くとき、仲間と力を合わせて作業することは大切である。
10 私にとって働くことは、いだいている夢を実現させるためである。
11 私にとって働くことは、世の中のためである。
12 私にとって働くことは、余暇に遊ぶためである。
13 私が就職して働くとき、職場の仲間と仲良くすることはたいせつである。
14 私にとって働くことは、自分を磨くことである。
15 私にとって働くことは、人々のためになることでである。
16 私にとって働くことは、生活を維持していくためである。
注)1,5,9,13の項目が「職場人間関係の因子」 2,6,10,14の項目が「自己実現の因子」
3,7,11,15の項目が「社会的自己実現の因子」 4,8,12,16の項目が「社会的ステータスの因子」の項目である。逆転項目はない。

D「個人志向性・社会志向性」質問項目
1 人に対して、誠実であるよう心がけている。
2 自分の個性をいかそうと努めている。
3 自分の心に正直に生きている。
4 他の人から尊敬される人になりたい。
5 小さなことも自分ひとりでは決められない。
6 他の人の気持ちになることができる。
7 自分の生きるべき道が見つからない。
8 他人に恥ずかしくないように生きている。
9 自分が満足していれば人が何を言おうと気にならない。
10 周りとの調和を重んじている(大切にしている)。
11 社会のルールに従って生きていると思う。
12 社会(周りの人)のために役に立つ人間になりたい。
13 自分の信念にもとづいて生きている。
14 人とのつながりを大切にしている。
15 周りと反対でも自分が正しいと思うことは主張できる。
16 社会(周りの人)の中で自分が果たすべき役割がある。
17 自分が本当に何をやりたいのかわからない。
注)2,3,5,7,9,13,15、17の項目が「個人志向性」
1,4,6,8,10,11,12,14,16の項目が「社会志向性」
5,7,17の項目が逆転項目である。