2 スクールカウンセラー配置校の立場から
                      神戸市立駒ケ林中学校 校長 清水孝暉

 スクールカウンセラー制度につきましては、結論から申し上げますと、是非ともこの制度は継続してほしいということを強く要望します。昨今の社会情勢や学校が直面している多くの課題から見ても、殆どの学校はこの制度の継続を望んでいるのが現実だと思います。
 はじめに個人的なことで恐縮ですが、私は20数年前に担任として不登校生に関ったことがあります。その時はどうにも打つ手立てがわかりませんでした。「家からは出ない。担任と話をしようとしない。」といった具合で事態は止まってしまいました。そして、その状況は長く続きました。その後も転勤でいろんな学校で勤務をしましたが、似たような状況があるもののあまり進展はありませんでした。そして、数年後のことですが「巡回アドバイザーという制度があり、そこの先生方は不登校の生徒についても高度な知識を持って指導にあたっておられる。」ということをお聞きしました。早速、連絡をとり、こういう生徒がいるということで相談をさせて頂きました。そのときに巡回アドバイザー(臨床心理士)の先生は担任の話に対して「そうですか。難しいことですね。そうです。それでいいんですよ。その場合はこうして下さい。」などと、その裏付けとなる理由も話しながら非常に明快に指導して頂きました。その結果それぞれの担任は今まで、もやもやしていたものが吹っ切れたといいますか、肩の荷がおりたといいますか気分が軽くなり、しかも自信を持って対応できるようになりました。なぜ自信を持って対応できるようになったかを振り返ってみますと、スクールカウンセラーは担任にとって実行可能なことを実に明快に指示して頂いたからではないかと思っています。その後、こういった知識や理論はいずれ多くの教師にとっても必ず必要になってくると考え、職員研修という形で貴重な話を聞かせて頂くことになりました。これが私にとっては今でいうスクールカウンセラーとの初めての出会いで、すごく感動したことを覚えています。
 配置期間につきましては2年では短いと思います。何年あればいいという問題ではないと思いますが、できるだけ長いほうがいいと思っています。1校に1人、全校配置という声も聞きますが、例えば神戸市立の中学校だけでいいますと82校でなんとかなりそうな気もしますが、全国では小学校と中学校だけでも国公立私立をあわせて、3万5千校以上あるわけですからこれだけの人数を確保することは、現実問題として難しいでしょう。従って、今の状況を改善しながらできるだけ多くの学校が活用できる方法を考えていくことが大切かと思います。
 先ほど申しましたように、巡回アドバイザーという制度がありましたが、今はなくなっています。活用が少なかったためになくなったということを聞いています。多分多くの方々にまだその存在が十分に知られていなかったのではないでしょうか。その後教育相談指導室や総合判定会議などと変わってきています。諸般の事情により止むお得ないと思いますが、心の問題に関しては2年や3年で変わるのではなく、長い目で、長いスタンスで見守って頂けることを願っています。本校の場合でも2年目にしてやっとしっくりいきはじめたかなという印象を持っており、期限後も連絡をとって指導を受けたいと考えている課題もあります。
 スクールカウンセラーの更なる活用ということにつきましては、この制度が始まって間もないということや受入れる側としましても、初めてのことなのでスクールカウンセラーがどのようなことをどの程度までやって頂けるかなど、最初は暗中模索の状態でした。スクールカウンセラーの側にとっても同じではなかったかと思います。現在では少しはデータもあると思いますので、それらも参考にして十分な話し合いをすることが、まず大切だと思います。
 スクールカウンセラーの仕事はいわゆる「相談」が中心だと思いますが、その他「講演」のほかにも「音楽療法」「ピア・カウンセリング」「ストレス・マネジメント」「エンカウンター」その他いろんなことがあるということをごく最近知り、30年前とはずいぶん変わってきたなという認識です。勿論スクールカウンセラーにはそれぞれ専門の分野があり違った面があると思います。
 スクールカウンセラーは「学校にあまり踏み込まないように」ということで、ずいぶん気をつかっておられるようですが、そういう点を踏まえたうえでスクールカウンセラー・行政・学校がそれぞれの立場で検討し、更に、合同で話し合う。それを継続し改善し、お互いが協力・連携することによって道は開けると思います。そしてこの制度が安定し、定着することを願っています。

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