T はじめに

 学校現場の深刻ないじめや不登校問題への対応策として、わが国の文部省が教育専門家の提言に従って実施に踏み切ったのがスクールカウンセラー制度である。この制度は平成7年度より、「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」として、全国の小中高等学校141校に、1日4時間、週2日、年間35週280時間勤務の非常勤カウンセラーの配置のかたちでスタートした。その後年度毎に学校数が増え、平成10年度には全国の小中高等学校の1661校にまで拡大し配置されるようになった。  また、文部省は、この度のスクールカウンセラーの職務について、つぎの4つの項目を付記している。
(1)児童生徒へのカウンセリング
(2)カウンセリング等に関する教職員及び保護者に対する助言・援助
(3)児童生徒のカウンセリング等に関する情報収集・提供
(4)その他児童生徒のカウンセリング等に関し各学校において適当と認められるもの
 以上の職務内容にみるように、スクールカウンセラーの役割についてごく大まかな説明が提示されている。 学校現場での具体的な実践活動の内容についてはカウンセラーが独自に工夫し、取り組まなければならないのが現状である。  いずれにせよ、公立学校へ非常勤とは言え、教職員以外の専門家が配置されたのは戦後初のことであり、いじめと不登校問題の対応をきっかけに、ひいては学校教育の変革へもつながる画期的な試みとして、とくに教育関係者の期待と関心には多大なものが感じられる。果たして、スクールカウンセラーは学校教育の危機の時代とも言われる、教育現場の困難な事態を克服する救世主になりうるのか。試験的に実施されている現在のスクールカウンセラー制度の効力が学校現場へ十分浸透し、その成果が評価され、全国の全小中高等学校へスクールカウンセラーの配置が定着するためには、今後どのような施策が必要なのか。  
 本調査研究報告書は、上に述べた経緯でわが国の学校現場へ導入されたスクールカウンセラー制度の実情について分析したものである。兵庫県内のスクールカウンセラーの配置校111校と88名のスクールカウンセラーを対象に、スクールカウンセラー活用の実態と今後の発展的解決課題について調査した。  
 本調査研究の目的は、スクールカウンセラー制度の定着化の方向を探る視点から、スクールカウンセラーの活動の成果を評価し、スクールカウンセラーを受け入れる側の学校の条件と専門家としてのスクールカウンセラーの資質と力量および業務内容等に関する課題を明確にするために立案された。つまり、スクールカウンセラーは学校現場で専門家として本当に役に立っているのか。学校はスクールカウンセラーを積極的に活用しているのか。スクールカウンセラーは学校にとって本当に必要な人材なのか。学校とスクールカウンセラーはそれぞれこの度のスクールカウンセラー制度にさらに何を期待し望むのか。等々について、本調査研究報告書は明らかにしている。
 わが国の学校現場におけるスクールカウンセラー制度の活性化と今後の進展のために、本報告書を是非ご一読いただき、ご教示、ご助言いただければ幸です。
                  心の教育総合センター所長   上地 安昭

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