1 高校生へのリラクセイションの試み
                  
   定金浩一(兵庫県立西宮今津高等学校)

要 約
 高校生に対する「心の教育」の一つとして、高校3年生を対象にリラクセイションの2時間の授業を行った。高校3年生は目前に進路決定が迫り、かなりストレスがたまるという現状がある。近年特に受験に対する耐性が低い生徒が増加し、受験不安で本来の能力が発揮できない生徒が多くなっている。そこで、リラクセイションの方法を身につけることによって、受験不安を軽減し、本来持っている能力を十分に発揮できるようにしてもらいたいと思った。リラクセイションとして、腹式呼吸による呼吸法を取り入れた。
 ほとんどの生徒は授業に対して意欲的に取り組んだ。その結果、腹式呼吸でリラクセーションができた生徒は、日常生活でも腹式呼吸を活用している。また、腹式呼吸を試験など緊張する場面の前にのみ使っている生徒もいる。 授業の実施前後に、自己効力感・特性不安・状態不安の心理テストを行い授業効果を分析すると、自己効力感が高まり、特性不安が減少していた。この授業が「心の教育」として有効であることが言える。また、ストレス社会と言われている現在、緊張を解く方法を知っていることは、今後の生活に大きな意義がある。

1 はじめに
 中央教育審議会「幼児期からの心の教育の在り方について」の答申や、平成9年10月に出された兵庫県「心の教育緊急会議」(座長:河合隼雄)など、心の教育についての提言が多くなされている。
 学校現場で「心の教育」をするにあたって、冨永(1998)は、「心の授業」の内容として「ストレスマネジメントとしての教育」「人間関係体験」「自己開発・自己発見」の3分野を提唱している。今回は「ストレスマネジメントとしての教育」として高校生にリラクセイションを試みた。
 リラクセイション・トレーニングは、心身のリラックスした状態を段階的に得るための訓練法であり、ストレス緩和法として用いられることが多い(佐々木雄二 1992)。また、笠井(1997)はリラクセイションと学習効果にはついて、不安・緊張の低減、注意力・集中力の向上、イメージ想起の促進、人間関係の改善をあげている。
高校3年の進路決定の時期のストレスは大変なものがあり、ストレスを緩和または軽減する方法を身につけることは大きな意味がある。ストレスは各個人の状況の見方による(D.Meichenbaum 1994)ことを考えると、ストレス対処の仕方を知ることは、状況の見方を変えることになり、ストレスを軽減することになる。そこで、ストレスマネージメント教育の効果が最も期待できる高校3年生を対象に授業を行うことにした。

2 授業の指導案
(1)対   象 高校3年生
(2)時   間 LHR、2時間配当の1時間目
(3)場   所  会議室
(4)本時の目標 緊張すると力を十分発揮できないことを認識し、リラックスの重要 性を確認する。リラックスする方法として腹式呼吸によるリラクセーションを修得する。
(5)準 備 物 心のアンケート、ビデオ、プリント1枚、CDデッキ、マイク
(6)展   開

     1時間目の指導案

場  面   活   動   内   容  留 意 点
ねらいの説明

心のアンケート

インストラクション

 

シェアリング

インストラクション

 

 

 

 

 

シェアリング

エクササイズ

シェアリング

エクササイズ

振り返り

次時の予告

本時のねらいを簡単に説明する

アンケート記入

NHK「延長17回」の編集済みのビデオを見せる

 

ビデオを見てどう思ったかを聞く

清水選手(冬季オリンピック金メダリスト)の新聞記事を読む

緊張をコントロールする方法を学習しよう

「腹式呼吸によるリラクセイションとして、123で鼻から息を吸い込み、4で呼吸を止め5678910で口からゆっくりと吐き出す」と実演する

1人の生徒にデモンストレーションをしてもらう腹式呼吸の感想を聞く

腹式呼吸のトレーニングを全員でする(2分間)

腹式呼吸をしてどうだったかを聞く

消去動作を提示し、腹式呼吸のトレーニング(2分間・波の背景音楽を流す)をする

この時間の感想を書いてもらう

リラクセイションの理論的背景について学習する

 

 

ある意図を持って編集しているので、その意図は何かを考えさす

 

緊張したり、不安がよぎると、鍛えられている人間でも平常心でいることができない。それをうまく克服した人として、清水選手の新聞記事を提示する

 

 

あまり人前でも恥ずかしがらない生徒を選ぶ

 

 

家でも練習するように提案する長時間する時は消去動作をするように注意する

(1)対   象 高校3年生
2)時   間 LHR、2時間配当の2時間目
3)場   所  教室
4)本時の目標 前時に行った呼吸法によるリラクセイションを理論的に理解する
5)準 備 物 プリント1枚 ひもの付いた5円玉
6)展   開
     2時間目の指導案

場  面   活   動   内   容  留 意 点
ねらいの説明

インストラクション

 

 

エクササイズ

 

シェアリング

エクササイズ

 

 

シェアリング

 

振り返り

本時のねらいを説明

リラックスと脳波、自律神経、無意識の講 義をする。 無意識の力の大きさを話す。
無意識に働きかけることができる方法とし てイメージの話をする
イメージすることでひもで結んだ5円玉が 動くことを実演する。

イメージすることで手が動くことを確かめるため、5円玉をひもで結んだものを、左右に動くことをイメージさせる。

よく動いた生徒に感想を聞く

リラックスとイメージを取り入れ、いやな気持ちを息を吐くときに同時に出すことや、理想の状態に近づくために、点数化して1点上がった状態をイメージすることを提案する。

呼吸法によるリラクセイションをする

前回と今回の呼吸法によるリラクセイションの変化について聞く

授業の感想を書く。

 

リラックスと、脳波、自律神経、無意識は関係がある

 

力を抜いて、無理に動かそうとしない

 

5円玉の実験で、体とイメージの関係を確認させる

リラックスとイメージを結びつけ、リラックスの有効性と日常での使用のモチベーションを高める

3 授業効果の分析方法
リラクセイションの授業の効果を測定するために、腹式呼吸によるリラクセイションを体験した生徒と体験していない生徒を対象に、1回目の授業の前と2回目の授業の後に自己効力感・特性不安・状態不安の3種類の心理テストを行った。
分析対象は、体験者として、2回の腹式呼吸によるリラクセイションの授業を受講した32名と、非体験者としては、2回の心理テストを受けた100名とした。
 3種類の心理テストについて統計処理をし検定を行った(結果は、5 授業の結果に)。
また、各回の授業の後に、振り返りとして体験者に授業の感想を書いてもらった文章を比較検討した。

4 授業実践の内容
1回目の授業実践の内容
1,授業題目
「前から話していたストレス解消法だけれども、今日は、ストレス解消法として、「リラクセイション」(板書)の授業をやります。」
2,心と身体のアンケート
「この授業をやる前に心と身体のアンケートをしたいと思います。あまり深く考えずに今の自分の状態に最も近いと思うとことに印を入れて下さい。では読み上げますよ。」と言って、1項目ずつ読み上げる。
3,導入
「みんなも部活動の大会とか、試験とか、プレッシャーがかかることあるよね。みんなは、どうかな?プレッシャーがかかったとき、心と体はどんなふうになるのかな?」(何人かの生徒の発言を求める)
心臓がドキドキする、前の日に眠れない、など心と身体の緊張のあり方の具体的な発言を求めてゆく。

4,ビデオ鑑賞
「今から少しビデオを見てもらいます。このビデオは、NHKで放映された延長17回というビデオを編集したものです。PL学園と横浜高校の試合の舞台裏の心理戦を克明に映像で確認しているようなものです。まず見て下さい」

(ビデオ内容)
 横浜高校とPL学園は春の選抜でも対戦し、春も横浜高校が勝っている。横浜高校が勝敗を分けた得点は、3塁ゴロの間に横浜の3塁走者が、捕手の位置を確認し、3塁手と捕手の直線上に走塁、ボールが身体にあたって得点になった。夏の大会でまったく同じ場面が起こった。PL学園の捕手は、春の大会のようにまずホームベースの前で構える。しかし今回3塁手は、捕手が構えているところとは全く違うところに投げたが、タッチアウトにしている。3塁手が捕手が構えているところとは全く違うところに投げたのは、「春の反省から同じ場面が起こったら、まず捕手がホームベースで構えて走者を捕手の方に走らせ、わざと投球をはずして走者に当たらないようにした」という映像をまじえた証言ビデオである。

「今のビデオを見てどうですか?野球部の子どう?」(野球部の生徒にインタビューをする)「すごいよね。同じような場面なんかめったに起こらないのにそれに備えて練習するなんてね。ほんとうに鍛えられているよね。次に見てもらうのは、この続きなんですけど、ここまで鍛えられた生徒でも・・。では見て下さい」

(ビデオ内容)
横浜高校の勝利は、延長17回ツーアウトでもうこの回も終わりかと思えた時、横浜の打者が打った何でもないショートゴロをPL学園の選手が暴投し、次の打者がホームランを打って決まった。PL学園の遊撃手(ショート)は、10回からグランドが荒れてきていることが気になっていた。その時、3塁の前でボールがイレギラーし、3塁手がボールを取れなかった場面を横で見て、ボールが飛んでくるのが怖くなってきた。次に自分のところに飛んできたボールは、いつもならば取れるものが取れずにセンターに抜ける。そのことでよりイレギラーが怖くなり、17回のあのプレーが生まれる。PL学園のショートの生徒の心理的な動きを映像を交えて確認している。

 「今のビデオ見てどう?」(何人かの生徒にインタビューし発言を求める。)「あれだけ鍛えられている生徒でもね。なぜあの様なことが起こったのかな?」(何人かの生徒にインタビューし発言を求める)。リラックスできないとあの様に鍛えられている生徒でも自分の力を発揮できないとか、心の状態でプレーが変わるなど、心と身体の緊張のあり方、心と能力の発揮の仕方などの具体的な発言を求めてゆく。 

5,清水選手の新聞記事
「プレーシャーをはねのけて成功した人がいます。皆さんも覚えていると思いますが、長野オリンピックで金メダルをとった清水選手の新聞記事があります。今から配りますから各自で読んで下さい」

(清水選手の新聞記事)
『「我以外皆我が師」感謝』1998年2月23日(朝日新聞)の記事を抜粋する。記事内容は、500メートルのレースの直前の1週間は「だれか助けてくれという」という心境で、逃げ出したくなったが、悩み抜いた結果レース前夜気持ちが軽くなった。そして成功のイメージがわき、力を入れるのではなく、力を抜いて滑ることができた。指の力を抜くことは、8割の気持ちで10割以上の力をだすコツ。リラックスした滑りは流しているように見える。

 「新聞記事を読んでどうですか?」(何人かの生徒にインタビューし発言を求める)リラックスや平常心の重要性や、成功イメージやイメージトレーニングの効果などの具体的な発言を求めていく

6,プレッシャーの克服法(ストレス対処)
 「いつでも、どこでも、かんたんにプレッシャーを克服できる出来る方法があるといいよね。有名スポーツ選手もやっている簡単なリラックス法を先生は知っています。じゃ、いまからやってみましょう」

7,腹式呼吸
 「誰か、モデルになってくれる人いませんか?(みんなに見えるように輪の中心に出てもらい、デモンストレーションをする。出てくれた人は、勇気があるとほめたたえる)
少し緊張している?・・緊張してて当然だね。腹式呼吸の後どんな感じになったか後で教えてね。先生が一度腹式呼吸の部分だけしてみるからね(1度C〜Eのデモンストレーションを行う)では、指示通りにしてね」
@姿勢を整える。(椅子の背もたれに軽くもたれ、膝は鈍角にし、両手は膝の上に載せ、首が軽くうなだれる。)
A静かに閉眼する。
B吸っている息を全て口から吐き出す
C「一、二、三」で鼻から息を吸いながら、お腹を膨らませる
D「四」でいったん止める
E「五、六、・・・九、十」で、口から息を吐き出しながら、お腹をへこませる。
F「C〜E」を2分間行う。
モデルの生徒に腹式呼吸をしてどのような変化があったかを詳しく聞く。

8,腹式呼吸(全員)
 初めは説明しながら、指示に従って練習を1度する。次に「今から2分間の時間を計りますので、各自姿勢を整えてして下さい。からだや心がすーっとしたいい気分になれるとそれが「リラックス体験」です。ゆっくりと感じて下さい。では始めて下さい。」
(何人かの生徒にインタビューし感想を求める)ゆったりした気分や落ち着いた気分など具体的な発言を求めていく。

9,消去動作
「 腹式呼吸は大変効果的ですが、自己催眠の要素があります。慣れてくると、腹式呼吸だけで、トランス状態に入る人がいます。消去動作というものを教えますので、自分でするときは、最後にこの消去動作を是非して下さい。(@〜Bのデモンストレーションを行う)」
@ ジャンケンの「グー」、「パー」を10回
A肘の屈伸を5〜6回
B大きく伸びをし、静かに目を開く

10,腹式呼吸の練習
「これからより効果があるといわれている音楽を流しますので、音楽を聞きながら腹式呼吸をして下さい。2分経つとやめて下さいと言いますので、消去動作をして目を開けて下さい。では始めます。」
(何人かの生徒にインタビューし感想を求める)

11,振り返り・次時の予告
「今日の授業の感想といまの気分をチェックして下さい。振り返り用紙に素直に書いて下さい。次回は、リラックスと脳波との関係、無意識とイメージについて勉強したいと思います。家でも腹式呼吸の練習をしておいて下さい。」

2回目の授業実践の内容
1,授業題目
 「前回腹式呼吸のリラクセイションをしたけど、今日はイメージと脳波、無意識について話をしたいと思います。「イメージ」(板書)の授業をやります。」
2,導入

「今配った資料を見て下さい(資料は藤原さんの資料。資料編に添付)。脳波には色々の波があって、α波がでるといいみたいですね。α波はリラックスするとよく出るようです。前回やった腹式呼吸はα波を出すためだったんですね。」「腹式呼吸をやった意味がわかったかな?脳波ってわかったかな」(何人かの生徒にインタビューし感想を求め、質問を受け付ける)「では次のプリントを読んで下さい。無意識って言葉聞いたことあるよね。無意識ってすごく大きな影響を与えているんだね。無意識ってすごいね」(何人かの生徒にインタビューし感想を求める)「では無意識に私たちが働きかけるにはどうしたらいいか?誰か方法を知っていますか?」「実はその唯一の方法がイメージなんです。みんなもイメージトレーニングという言葉を聞いたことがあるよね。前回の清水選手もイメージトレーニングしていましたね。」

3,体験(5円玉の振り子)
「ではちょっとここで実験をしてみましょう。今5円玉に糸を通したものがあります。腹式呼吸をして少しリラックスした後糸を軽く持って、5円玉を見ながら右に左にゆっくりと動くことをイメージします。無理に動かそうと思ってはいけません。そして、無理に止めようと思ってもいけません。腕に力を入れずにゆっくりとイメージします。では、デモンストレーションとして、私がしますから見てて下さい。」
(デモンストレーションをする)
「では、腹式呼吸を5回してから、軽く糸をもってイメージして下さい」
(何人かの生徒にインタビューし感想を求める)イメージってすごい力とか具体的な発言を求めていく。
「動かなかった子もいたけど、これは個人差もあるし、体調だって関係あるから心配する必要はありません。腕の緊張がうまくとれるようになるとできます」「さて、イメージを利用すると腹式呼吸のリラクセイションも応用がききます。例えば、腹式呼吸で息を吐くときにいやな気持ちを一緒に吐くことをイメージすると気持ちが少し楽になったり、または、腹式呼吸をしてリラックスしたときに、よりよくなっている自分をイメージすると、無意識がその姿を覚えるとかいろいろあります。」

4,腹式呼吸
「では、腹式呼吸の練習をしましょう。みんな家でやってきましたか?。今から2分間を3回します。いろいろなやり方をいいましたので、それを試してみるのもいいですね。2分たったらやめてといいますので、消去動作をしてしばらく休んで、また2分間としますので、いいですか?では始めて下さい。」(何人かの生徒にインタビューし感想を求める)具体的な変化などの意見を求めていく

5,心と身体のアンケートと振り返り
「心と身体のアンケートと振り返り表を配りますから、記入して下さい。あまり深く考えずに今の気持ちに最もあてはまると思うものを選んで下さい。」

5 授業の結果
 1)生徒の感想(抜粋)

1時間目の感想 2時間目の感想
女子  ビデオを見たときすごくイライラした。腹式呼吸をした後は少し眠たかった。 前の授業の時よりあまり眠たくもならないですごくリラックスした状態になった。
女子 自分自身落ち着いた気持ちに少しはなれたように思います。ビデオを見て、一度失敗した時に後で引きずってしまうのか、次に臨むのかは結果が違ってくるものだなと思いました。 この前よりはリラックスできたと思う。リラクセイションをやっているときに眠たくなった。
男子  何かわからないけど、少し変わったような気がする。  なんとなく何かが変わったような気がする
1時間目の感想 2時間目の感想
男子 今日はおもしろかった。でも鼻で息をはかないと少し苦しいのでつらかった。落ち着いた気分になったが、頭がボーとした。リラックスした感じだ。次も頑張る。 今日呼吸法をしたらすごくスッキリした。よかった。
女子 あの呼吸法は一人でいる時の方がよく効くと思います。人がいるところでしてもあまり効かないです。 ビデオを見た感想としては、つらかったというか、泣きたくなったというか・・・。受験の時もああいう気持ちになるかなと思いました。でもちょっと効いた様な気がします。  会議室でした時よりも教室の方が太陽の光があって気持ちがよかった。5円玉を動かすのは、すぐにできておもしろかった。やっぱり今回は慣れたせいか、今日の方がリラックスできた。
女子  呼吸をやった後はほとんどかわりませんでした。やり方が悪かったのか息苦しくなりました。ビデオを見た時は、前に一度見たものだったけどドキドキしながら見ました。リラクセイションには他にどんなものがあるのか興味がわきました。 今回の呼吸法は、この前やり方がよくなかったみたいだけど、今日は息苦しくならなかった。5円玉のはあまり動かなかった。これらのことを続ければいずれはリラックスができるのかなと思いました。
男子   最高。ビデオを見て松阪君がすごいと思った。腹式呼吸をして落ち着いた最高。 5円玉を左右に動くように念じたら動いたからおもしろかった。前の授業と違って、かなりリラックスできたと思う。とても安らいだ感じがした。
男子  腹式呼吸の後なにか違う感じがした。

 

 前回よりいい授業だった。最後のリラクセーションの後は、全身の力が抜けて頭も体もボーとした感じだった。悪い気分ではなかった。
女子 腹式呼吸はしんどくなった。息がしにくい。あと眠たくなった。 体が楽になったような気がする。
男子  野球はショートとかバッテリーとか言われてもどこのことかわからない。人が周りにいるときにリラクセーションができるはずがない。でも、おもしろかったのでまたやって欲しい。  クラス全体ですると宗教っぽくて怖い。呼吸法はいつもやってると途中で気分が悪くなる。γ波とかβ波とかはおもしろいと思った。
よくわからなかった。 少し気持ちがよくなった。
男子 眠くなるので、後の授業が大変である。 睡魔と戦っているので、今日は授業に参加しませんでした。
1時間目の感想 2時間目の感想
女子  波の音はけっこう落ち着くかもしれない。  5円玉でのイメージトレーニングは初めてだったけどかなり振れた。クラブの時とかやっていた想像してから大会に出るというのもこれに入るのだろう。
女子 呼吸をするときに、秒数を数えなくてもいいと言われたけど、やっぱりどうしても気にしてしまって逆に疲れた。一度心配してしまうと、なかなか気持ちを切り替えるのが難しい。今度はプレッシャーに勝てる方法を。 今回はあまり秒数を意識せずにできた。

2)アンケート結果(リラックスの授業終了2ヶ月後のアンケート)

はい いいえ
問1,リラクセイションの仕方は少し身についたと思いますか? 14 13
問2,リラクセイションはストレスコントロールに役に立つと言われていますが、ストレスがたまるような場面が想定できるときには使おうと思いますか? 18 17
問3,心の教育の一環として、リラクセイションを行ったのですが、このような授業は今後も続ける(推進)方がいいと思いますか? 26 10

3)心理テストの結果

項目 体験の有無
( )内は人数
授業実施前
(A)
授業実施後
(B)
変化
(B)−(A)
自己効力感 体験者 (32) 24.03 25.47 1.44 *
非体験者 (100) 27.24 27.87 0.63
特性不安
STAIC-T(C-U)
体験者 (32) 42.75 40.81   -1.94 *
非体験者 (100) 43.44 42.68 -0.76
状態不安
STAIC-S(C-T)
体験者 (32) 37.06 36.94 -0.12
非体験者 (100) 36.08 35.13 -0.95

                                               * は統計的に意味のある変化である( *:p<.05 )

心理テストの結果は、体験者の自己効力感が高まったことを統計的に示し、特性不安が減少したことを統計的に示している。

6 考察
 1)心の教育としてのリラクセイション どの授業でもそうであるが、導入の成功が授業の成否を分ける。心の教育ということで、新しいことをするときは特に重要である。導入資料については十分検討する必要がある。高校生の場合印刷物などで導入することも可能であるが、ビデオなどの映像の方が導入しやすい。また授業実践に近い時に起こった話題的なものの方が効果がありそうだ。そして、できれば、同年代または同世代のものを扱う方がより効果的である。 実際に体験をさせようとしても腹式呼吸をしない生徒もでてくる。その時は、無理にさせたりせずに出来れば体験してはどうかという態度で臨む必要がある。また、事前にこの授業をする意義などを十分説明する必要がある。そして、体験だけで終わらせるのではなく、高校生になると心理学に興味を持っている生徒も多いので、心理学的な背景などを取り入れた理論的な解説を加える方がよい。心理学的な授業を少しした後に体験する方が取組がよかった。これは高校生という年齢特性上、理論的に納得しなければ行動にうつすことを嫌がるからである。 最近は精神的に不安定な生徒が多くなってきている。このような生徒がいる場合は、簡単な腹式呼吸によるリラクセイションであっても何か不測の事態が起こらないとも限らない。そこで、事後のフォローができる体制を作っておく必要がある。その意味で学校全体で連携をとって取り組む必要がある。スクールカウンセラーなどと連携を取りながら「心の授業」をしていくのが望ましい。 授業の頻度に関しては、最近の生徒は何度も同じことをするとすぐに飽きる傾向がある。飽きると動機が下がってしまい授業効果が少なくなる。そこで、飽きさせないことを考えると、まずは2回ぐらいのプログラムで行う方がいい。
 2)手段としてのリラクセイション リラックスする手段として、腹式呼吸があるということを知っていることは大変重要なことである。授業実施2ヶ月後にとったアンケートで、腹式呼吸の練習をしているものは少なかったが、緊張する場面がある場合に腹式呼吸をしますかという問いに対して、半数以上のものが「する」と答えた。これは、腹式呼吸をすることによってリラックスできそのメリットを実体験しているからである。 また、実際に模擬テストの前に腹式呼吸をして落ち着いてテストが受けられたという報告や、実際の入試には是非活用したいという感想もあった。毎日続ける方が効果的ではあるが、日頃はしないが、いざとなった時に使えるものを持っていることは、今後、いっそうストレス社会になると言われている日本において、大変大きな教育効果といえる。
 3)考えられる発展・応用 リラクセイションの授業の発展として、生徒がリラックスの方法を身につけることにより、緊張する場面でも本人の能力を発揮することができる。また、リラックスする手段を知っているということが、不安を軽減させ能力を発揮させることができる。そして、心と身体の関係に敏感になることによって、自分自身をコントロールすることができ、自分自身を見つめることができるようになる。同時に他人の理解も促進し、他人に対する対応も変わって不必要なトラブルも軽減するなどの効果が考えられる。 リラクセイションの授業の応用として、学活やSHRの始めに行うことによって、心を落ち着かせて連絡事項の伝達や授業を導入することができる。また、イライラしている生徒や問題を起こした生徒などと話をする時に、リラクセイションを行うことによって、落ち着いて話ができる。また、落ち着かせることによって、問題点の発見や反省を促すことができることなどが考えられる。

  文献
Donald , M . 1989 Coping With Stress 根建金男・市井雅哉(訳)1994 ストレス対処法  講談社現代新書
藤原忠雄 1997 リラクセイション 岡山県学校教育相談研究記録「森」第20号
藤原忠雄 1998 高校生のストレスマネジメント授業案 導入について 「ストレスマネジメント教育」1998.5.23の資料 林 茂雄 1983 催眠入門  誠信書房
飯田 宏 1978 驚異の新開発 自律健康法 青春出版
伊川義安 1994 教育催眠で子どもが変わる 黎明書房 
生月 誠 1995 プラス暗示の心理学 講談社現代新書
管 徹・上地安昭 1996 高校生の心理・社会的ストレスに関する一考察 カウンセリング研究 第29巻 第3号 pp197-207
笠井 仁 1997 リラクセイションと学習効果 國分康孝(監修) スクールカウンセリング事典 東京書籍 pp277
成瀬悟策 1968 催眠面接法 誠信書房
佐々木雄二 1976 自律訓練法の実際 創元社
佐々木雄二 1992 リラクセイション・トレーニング  氏原 寛(編)心理臨床大事典 培風館 pp331-333
田中孝頭 1987 タイムプロセス法で自己実現を100%可能にする 現代書林
冨永良喜 1998 予防的・開発的な教育相談(心の授業)の進め方 兵庫教育第50巻  第9号 pp12-pp17
 渡辺由貴子・渡辺覚 1998 図解雑学 ストレス 長嶋洋治(監修)ナツメ社

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