卒業生連続講演A
柳田 敏雄氏
(大阪大学医学部・大学院生命機能研究科教授)
「アトムはなぜ誕生しなかったか?」
―生物と機械のちがい―
2007/07/11(wed)

 創立110周年記念事業の一環として行われている卒業生連続講演会。今回はその第2弾として、昭和40年の本校卒業生で、現在は大阪大学医学部・大学院で教授として勤めておれれる柳田敏雄先生を講師にお招きした。柳田先生は1998年に学士院賞・恩賜賞を受賞されるなど、国内外で広く活躍する生物物理学の第一人者である。
 講演タイトルは、「アトムはなぜ誕生しなかったか?」。20世紀後半、コンピュータ技術は予想以上の発展を遂げてきたのに、手塚治虫氏がそのマンガの中で2003年誕生として描いた鉄腕アトムが、その年を過ぎてもいまだ誕生せず、それはおろかお掃除ロボットさえ現在まだ登場しないのはなぜなのか。生物と機械の違いを切り口に、分かりやすく、生徒たちが興味を持つようにお話をしていただいた。
   先生ご自身の小・中・高校時代のお話や、大学に入られてから今の職業・研究分野に至れれるまでのお話は、これから将来の進路を切り開いていこうとする生徒たちにとり、力強い指針となったようである。今は世界の最先端にある柳田先生の研究も、常に、素朴な疑問、純粋な興味・関心、そして地道な活動と着実な努力に支えられていたようにお話をうかがって感じた。
 記憶力、処理速度、正確さにおいてコンピュータは、人間の脳をはるかに上回る能力を持っている。しかしそれでもアトムが誕生しないのは、正確さを求めるコンピュータの頭脳には、人間の脳のような「あいまいさ」がないためであるというお話。そしてその「あいまいさ」が、我々人間の身体の動きを、あるいはこの社会全体を円滑に動かしているんだというお話に、参加者は大きく頷いていた。
 欧米の先進国の研究者たちは、「あいまいさ」をあまり好まず、論理的な正確さを追い求めるので、日本人研究者は今後この「あいまいさ」について研究を深めていけばきっと活躍できるだろうと、若い「将来の研究者たち」にアドバイスを頂いた。
 最後には、3年生・山本宗くんが「とても分かりやすいお話で、より興味を深めることができた」と謝辞。優れた先輩を持つことを誇りに思い、明日からの学校生活により一層充実した気持ちで臨んでくれることと思う。