人権教育推進資料<人権教育基本方針の解説と実践事例>はじめに |
−はじめに− |
新しい世紀に人権の文化を |
1948年(昭和23年)12月10日の国連第3回総会において「世界人権宣言」 が採択されてから,今年で50周年を迎えます。この間,世界では人権の尊重 が人類共通の価値観となるようさまざまな取組がなされてきました。しかし, 世界各地では,今なお,地域紛争やこれに伴う人権侵害,難民発生など深刻 な問題も見られ,人権が守られていない状況があります。そのような状況を 踏まえ,国連は,1995年(平成7年)から2004年(平成16年)までの10年間 を「人権教育のための国連10年」と定め,人権教育の幅広い推進を提言する 決議を採択しました。 また,我が国では,今なお課題が残存する同和問題をはじめ,さまざまな 人権侵害が存在している状況等を踏まえ,平成9年3月に「人権擁護施策推 進法」が施行されました。現在,この法に基づく人権擁護推進審議会におい て,人権尊重の理念にかかわる国民相互の理解を深めるための教育及び啓発 に関する施策の推進等について調査・審議が重ねられています。 本県では,阪神・淡路大震災の教訓や「心の大震災」ともいわれる神戸市 須磨区の事件など,生命と人権にかかわる問題を真摯に受けとめ,兵庫の教 育の新たな創造と明日に生きる子どもたちの望ましい成長を期してさまざま な施策を展開しているところです。 このような国内外の潮流や本県の実態を踏まえ,兵庫県教育委員会は,本 年3月に「人権教育基本方針」を策定し,来るべき21世紀に「人権という普 遍的文化」を築くことを目標に,人権にかかわる課題を総合的に解決するた めの教育の方向を示しました。 本資料は,指導者の研修のために,あるいは教育現場で実際に人権教育を 展開するための資料として,先に策定した「人権教育基本方針」の解説及び 人権教育の実践事例等をまとめたものです。 各指導者の皆様にあっては,本資料を学校教育,社会教育における人権教 育の推進のために活用いただき,すべての人の自己実現と共生を目指して, 創意に富んだ教育活動が展開されることを心から願っております。 最後に,本資料を作成するに当たり,「人権教育基本方針」の内容に即し た実践事例を開発・提供していただいた人権教育研究推進校の皆さんに対し て深く感謝申し上げます。 |
平成10年11月 |
兵庫県教育長 栗 原 志 |
第T章 人権教育基本方針とその解説 ・人権教育基本方針 ・用語の解説 ・人権教育基本方針Q&A 第U章 人権教育の内容についての解説 第V章 人権教育の実践事例について 第W章 参考資料 (省略) |
学校教育や社会教育において人権教育を推進するに当たっては,「人 権教育基本方針」の趣旨や内容を,各指導者が十分に理解しておくこと が大切です。今後,学校教育においては,基本方針の内容に基づいた人 権教育全体計画や年間指導計画の作成などの早急な整備が必要です。ま た,社会教育においては,公民館等で行う人権に関する住民の学習機会 の整備・充実を図るため,関係機関との密接な連携のもとに先導的事業 を展開するとともに,学習そのものを生涯学習にふさわしい内容と形態 に変え,学習意欲を高めさせることが求められます。 |
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兵庫県教育委員会が「人権教育基本方針」を策定し,県下の学校や教育機関に通知してから半年が過ぎました。その間,基本方針についての理解も進み,実践に向けて歩みはじめています。そこで,基本方針が策定された経緯やその趣旨についても理解していただくために,Q&A形式でお答えしていきます。 |
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なお,その時々の実態に即した当該年度の重点目標は,「指導の重点」を通じて示していきます。 |
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今後,なお残された同和問題にかかわる教育課題に関しては,「同和教育基本方針」の趣旨を生かし,同和問題が人権問題の重要な柱であると捉えつつ,「人権教育基本方針」に基づく取組の中でその解決を図っていきます。 |
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一つ目は,同和問題をはじめ,女性,子ども,障害のある人,外国人など,さまざまな人権にかかわる課題の解決に向けた教育として推進することです。 二つ目は,差別や人権問題の解決に向けた取組とともに,自己実現や「共に生きる社会」への展望のもとに,基本方針の4つの内容それぞれを目的として,「人権という普遍的な文化」の構築を目指した積極的な教育として推進することです。 |
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「人権教育は,全く新しい教育として構想されるものではない。兵庫 県においては,人権尊重の教育としての同和教育の歴史があり,人権教 育は,それを原点として,発展的に再構築を図ったものとして捉える (『人権教育の在り方について<報告>』より)」ことが大切です。さ らには,「人権教育のための国連10年」や国の人権擁護施策推進法の成 立など,国内外の人権思潮も踏まえ,人権教育を次の4つの内容に構成 して推進します。
本章では,「人権教育基本方針」の趣旨を具体化するに当たって,指 導者として留意するべきポイントを解説します。 |
1 人権としての教育
2 人権についての教育
3 人権を尊重した生き方のための資質や技能を育成する教育
4 学習者の人権を大切にした教育
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本書の実践事例は,平成10年度人権教育研究推進校が,「人権教育基本方針」 に基づいて行っている研究実践のなかから,人権教育の1〜4の内容に即した教 育活動の一部を掲載しています。 実際に学校教育や社会教育の場面でより効果的な学習や活動を行うためには, 各学校や地域の実態,学習者の発達段階や人権に関する認識の程度によって,さ まざまな展開の工夫と新たな視点からの着想が求められます。 また,人権教育の推進に当たっては,知識・理解に関する学習だけでなく,活 動や体験を積み重ねることを通して人権尊重の態度を身につけていくことが大切 です。しかも,人権問題の学習に関しては,その問題にかかわる人や文化との出 会いが,学習者にとって明るく力強い印象を与えるものになるよう配慮すること が必要です。 |
平成10年度人権教育研究推進校一覧 | |||
神戸市立中央小学校 | 和田山町立大蔵小学校 | 明石市立衣川中学校 | |
川西市立桜が丘小学校 | 東浦町立浦小学校 | 温泉町立照来中学校 | |
西脇市立日野小学校 | 神戸市立兵庫中学校 | 県立三木高等学校 | |
姫路市立花田小学校 | 尼崎市立大庄北中学校 | 県立姫路南高等学校 | |
龍野市立小宅小学校 | 伊丹市立北中学校 | ||
福崎町立田原小学校 | 市島町立市島中学校 |
実践事例一覧 | |||||||||||||||||||
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