提言のまとめ

◆「命の大切さ」を実感させる教育の推進
  なぜ今「命の大切さ」なのか
  核家族化の進行によって、家での出産や親族の死等、命に関わる大事な場面にふれる機会が少なくなる一方、 子どもたちの遊びの形態も変化し、仮想の世界の中で作り上げられた死に頻繁に接する中で、現実感覚が麻痺している側面がある。
また、子どもたちの命の重みに対する感受性が弱まっていることも指摘されている。
「生きる喜び」と「命の大切さ」を実感させる
  子どもたちの生き方に影響を与える心の奥底の実感的基盤は、感動をはじめとした様々な体験から得られるものである。
そこで、子どもたちに、命のかけがえのなさ、命がつながりあっていること等に気づかせ、生きることの素晴らしさや生きる喜びを実感させることが必要である。
◆「命の大切さ」を実感させる教育プログラムへの視点
  自尊感情を育む
  成就感・達成感や周囲からの愛情等を実感させることをとおして、自分自身をかけがえのない大切な存在だと思える自尊感情を育む。
ただし、それが独りよがりにならないように自省自戒の習慣を身につけることも必要である。
体験活動を充実させる
  自然にふれる体験活動や人とのつながりを実感できる社会体験活動、誕生・成長等の喜びにふれる体験や老いにふれる体験、 死の悲しみにふれる体験等をとおして、子どもたちに感動を味わわせ、感性や想像力を豊かにする。
情報社会の影の部分に対応する
  仮想現実と現実との違いを認識させ、有害情報から身を守る力を身につけさせる等、 子どもたちが適切に情報を活用できる力や情報社会での基本的なモラルを身につけさせ、情報社会の影の部分への対応ができるようにする。
命を守るための知恵と態度を育成する
  子どもたちの身近にある命をおびやかす行為に対して、未然に防いだり、 被害を最小限にくいとめる知恵を学ばせるとともに自他の命を守っていこうとする態度を育てる。
教員自身が命の意味を問いかける
  教員自身が自らも一人の人間として与えられた命を生きていることを自覚するための研修を充実させ、 対面する子どもたちに命について深い感覚を伝えられるようにする。
◆教育プログラムモデルと教員研修
  授業用指導案の作成と実践
  子どもたちの発達段階を考慮して、実際の学習・体験内容をテーマごとに整理した教育プログラムモデルを作成した。 この教育プログラムモデルに基づいて、人間としての喜びや悲しみ等にふれる体験をバランスよく組み合わせることにより、授業用指導案が作成できる。 実践に当たっては、ねらいを明確にし、事前の準備を注意深く行うとともに、事後の振り返りをとおして、 子どもたちの日常生活につながるように配慮しなければならない。また、子どもたち一人ひとりの多様多彩な状況を把握し、 家庭や地域の環境条件の違いなどにも十分に配慮することが必要である。
実践を支える教員研修の充実
  各学校、各教室で実践していく上では、教員自身の不断の研修が不可欠である。そのために、自己研修や校内研修、 地域での研修等多様な形での教員研修の充実を図らなければならない。