校長先生の授業 5月6日までの約束⑩

 みなさん、元気ですか。登校可能日も終わり、来週からいよいよ学校再開ですね。感染予防を日常の生活習慣に取り入れた新たな生活様式で学校は再開します。
 さて、学校が楽しみと考えている人もいれば、色んなことが不安に思っている人もいるでしょう。学校に来る、というのは それだけでエネルギーはいるし、人と人との中に入るのも不安なことのほうがむしろ普通かもしれません。私はそういうときは2つのことを考えます。一つは、「主体的に取り組む」です。受け身で過ごすのではなく、例えば「積極的に予習をして授業に臨む」とか、「今日はこれだけをやりきる」などです。すると、物事に取り組むのが楽しくなってきます。もう一つは逆に「何もせずに川面に浮かぶ浮き草のように、ただただ流れに身を任す」感じです。何もかも時間が解決すると思ってボーと学校に行って、ボーと毎日を過ごす感じです。そうすると、だんだん生活リズムが出てきて、いつの間にか普通に過ごすことができるようになってきます。不安に思っている人の方が案外多いですよ。では、最後のミニ授業10回目です。

 さて、最後に紹介する本は「栗の樹ファーム物語~栗山英樹、野球場を作る」(著者:栗山 英樹 出版社:マキノ出版)です。

 これは、現在プロ野球日本ハムファイターズ監督の栗山英樹さんが、北海道に小さな野球場を作ったドキュメンタリー物語です。皆さんは日本ハムファイターズの監督栗山英樹さんを知っていますか。実は栗山さんは私にとって、人生を変えてくれた人なのです。今回は本の紹介なのでそのいきさつは省きますが、もし私と栗山さんの関係を知りたければ、ぜひ校長室に来てください。
 栗山さんは、選手時代プロ野球のドラフト外というそれほど注目されなかった存在でした。国立大学出身の珍しい選手でしたが、苦労に苦労を重ね、なんと最後はゴールデングラブ賞(プロ野球で最も守備の上手い人に贈られる賞)まで取ったある意味スーパースターの選手です。しかしメニエール病にという病気に悩まされ、最後は泣く泣くプロ野球を引退しました。その後目標もなくなり、挫折の一途をたどりました。
 そんな栗山さんを助けてくれたのは、映画「フィールド・オブ・ドリームス」です。この映画は1980年代のアメリカの映画で、中年になった一人の男が、トウモロコシ畑を切り開き、新しい野球場を作るという夢を追いかけていく物語です。栗山さんは、病気になった後、この映画を観て、野球への楽しさを忘れないために引退を決意しました。日本で野球は「野球道」とも言われ、精神を鍛えるスポーツという風土があります。しかし、アメリカでベースボールは娯楽であり、スポーツはエンターテイメントという風土です。栗山さんは引退後、キャスターとしてアメリカの野球文化にも触れ、映画「フィールド・オブ・ドリームス」の中に出てくるあの自然の中の天然芝の小さな野球場をなんとか作ろうと決意しました。
 そんな時のことです。北海道に栗山町という町があります。そこにはまさに映画「フィールド・オブ・ドリームス」に出てくるような場所がありました。最初は荒地でしたが、栗山さんは自分と同じ名前の町に縁を感じ、そこに一から野球場を作っていくという夢を持ちました。しかし、何からどうしていいのかさっぱりわかりませんでした。
 でもみなさん、今までに紹介してきた本の中にも度々出てきましたが、頑張っている人には、何とか応援してあげようという人が必ず出てくるものです。栗山さんもしかり、この栗山町の人たちが、1人2人と球場作りを手伝ってくれて、それはいつのまにか街の人たちの夢にもなっていきました。得点板からベンチ、グランドの土、天然芝。ありとあらゆるものが、みんな手作りでまさに夢の野球場ができました。言葉では表現できないのでぜひ、インターネットで「栗の樹ファーム」で検索してみてください。天然芝の様子や毎年栗山カップと言う少年野球の大会がここで開かれています。野球が好きになる、そんな夢のある野球場です。
 皆さんは夢がありますか。私は先生になる時に栗山さんの影響を大きく受けました。栗山さんは野球への夢を持ち、そしてそれを実現し、さらに今ではプロ野球の監督までされています(まさか、こんなに有名になるとは思ってもいませんでした)。私も少しでも追いつきたいと思ってここまで頑張ってきました。皆さんも素敵な夢を持って、その実現に向けて取り組む過程を楽しんでください。
これで10回にわたるミニ授業も終わりです。今日は5月4日です。これがホームページに掲載されるときはどのようになっているのでしょうか。では、学校でお会いしましょう。令和2年度の始まりです。







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