校長先生の授業 5月6日までの約束③

みなさん、元気ですか。最近は少し寒の戻りで風が冷たいですね。時間をみつけて人と離れてジョギングしたり、家の片付けや掃除の手伝いなど体を動かしたりすることも1日の中で継続して行ってくださいね。
では、3回目のミニ授業です。


 
 今回は、「人間の未来 AIの未来」(著者:山中伸弥 羽生善治 出版社:講談社)


   著者の山中伸弥さんは言わずと知れたiPS細胞を作り、ノーベル賞を受賞された京都大学iPS細胞研究所所長でもある研究者です。かたや羽生善治(はぶよしはる)さんは、史上3人目の中学生プロ棋士になり、1996年には竜王、名人他7つのタイトルすべてを獲得し、2018年に国民栄誉賞を受賞されました。みなさんは中学生棋士というと藤井聡太7段(もう7段なんですね)かもしれませんが、私たちぐらいの年代では、やはり羽生名人ですね。いずれにしてもそれぞれの分野では現役のスーパースターが、これからのこと、特にAIについて熱く語った本です。みなさんはAIについてどこまで知っていますか。実は私も今回この本を読んで一度インターネットで調べてみました。すると、30分くらいで、AIの歴史(1956年から始まり、現在3回目のブーム)から、機械学習・深層学習、弱いAI強いAI、最終的にはシンギュラリティーすなわちAIが人類の知能を超え、AIの改良を自分で行いコロナのように指数関数的に飛躍する、それが2045年くらい・などが学べました。本当に情報を得るのは今の時代一瞬でできますね。しかし、このことをこの二人の言葉を通すとどうなるかが楽しみになりました。
 読んでみてまず印象に残った言葉が、羽生名人の「AIの指す将棋は美しくない」ということでした。まとめてみると、「AIは、多くのデータの中からその場その場で一番いい手を指す。すなわち流れがないというか、一貫性や継続性がない。人が指すと攻めの流れやここは持久戦、ここは急に攻めに入るなど時の流れがある。そこに人は美しさを感じる」ということです。対戦結果は最近はAIが圧勝です。私は「人には負けの美学があるけどAIにはない」ともいえると思いました。対談の中で面白かったのは、最近はわざと負けてくれる将棋のAIがあるらしいです。ただ人間のようにそっと負けてくれるのではなく、例えば急に飛車を捨て出す、とかあからさまに負け始めるそうです。そういうことができるAIはまだまだこれからだそうです。
 また、お二人が共通して言われているのは、独創的な人と違った発想が大切である、ということです。山中先生は他人と違うことをやろうと思ったら、3つのパターンしかないと言われています。一つ目はアインシュタインのような天才の人、二つ目は例えば実験をして他人と違う結果がでたときに何故こんな結果が出たのかそこにとことん食らいつく人、そして三つ目はこれができたら素晴らしいと皆が思うけれどそれは皆が無理だろうと思うことにトコトンチャレンジする人、と語っておられます。そのためには「失敗しても『ナイストライ!』」と思えるか、が大切だと言われています。また、色々なお母さんから「どうやって育てたら子供がノーベル賞を取れますか」という質問に対しては、「人と違うことをしてても怒らないでください」と言うそうです。意味の無いように思えることでも意味があると、語っておられます。
 私も年を取ってきて、基礎基本は大事だけれど情報が多い分結果は多分こうなるだろう、とトライしないことが増えたような気がしています。自分だけしかできないこと、という発想は、本当に無くなってしまったような気がします。今日から少しナイストライ人生!を目指してみたい、という気持ちになれた本でした。みなさんもコロナが終息したら何か自分だけしかできないものに「失敗しても『ナイストライ!』」を是非実践してみて下さい。そんなことを想像するのも今の時期、楽しい時間になるのではないしょうか。これで、今日の授業は終わります。
 


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