アリスはいつだって突然だ

作・無能な魔術師見習い  
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 ありもしない前回のあらすじ

 俺ことジークフリート・グロリアは、新米冒険者だ。
 生まれ育った村での生活が嫌になり新たな(波瀾万丈な)生活を求め、王都ローザリアを目指した。だが、俺は王都がどこにあるのか知らなかった。
 当然、道に迷った。迷って迷いまくった。迷っているうちに大きな街にたどり着いた。
 とりあえず俺は冒険者の習性として、酒場へ行く。もちろんパーティーを組んでくれる人を探すためだ。
 だが、俺みたいな新入りは誰も相手にしてくれない。だから同じようなヤツを探すのが一番手っ取り早い。そんなときに俺はアリシアと出会った。
アリシアはどうみても子供だった。
酒場の親父の娘か、どこかのパーティーが親子で食事にきているのかと思っていた。
しかし、どうやらそうではないらしい。
・・・なぜか俺と目が合ってから俺の後をずっとついてくる・・・。
そのおかげで・・・まあ、いろいろとあった。
いろいろあったけれども二人(アリシアを入れるなら三人)も仲間になってくれる人を見つけた。
なにがあったのかは・・・・・・気にしないでくれ。

 それから1年ぐらいたった。

俺達はたまたま寄った村で、最近村外れの森に現れる魔物退治を引き受けた。
俺もそこそこ強くなった(それでもパーティー中で俺が一番弱い)し、そろそろ懐が寒くなってきたからだった。
しかし、うまくいっているときほどくだらないミスをしてしまう。
いつのまにか皆とはぐれてしまったみたいだ。
しばらく進むと広場みたいなところに出た。
そこでなぜかアリシアが倒れていた。
アリシアのもとへ行こうとすると突然、大熊が襲ってきた・・・。
なんとか大熊を倒した俺はアリシアのもとへ急ぐ。
もしかしたら、大怪我を負っているかもしれない・・・もし、そうだったら大変だ!

  1

「ほえ〜、とってもがんばったみたいれすねぇ〜、ジークちゃん。」
「・・・急に話しかけたら読者は何がなんだかわからんぞ」
「ふえぇっ?どうしてれすか?アリス分からないないれすぅ〜」
 どうやらアリシアは無事だった見たいだ。しかし・・・
「それよりも、どうしてこんな所で倒れていたんだ?」
「たしかぁアリス達は〜、街外れの森の中の、とっても古いお家に住んでいるモンスターさんを退治してくらさいといわれたのね。その森の中にぃ、お花さんがたくさんあるところを見つけてぇ・・・つい、そっちに行って遊そんれしまったれすぅ☆」
・・・やっぱり・・・どうせそんなことだろうと思っていたよ・・・はぁ。
がさっ。
「・・・?!おい!アリシア、何かいるぞ!」
がさがさがさがさっ!
 音がしたのは一方だけではなかった。
「どうやら俺達は囲まれてしまったみたいだ。」
「そうれすかぁ?あっ!本当れすねぇ・・・ろうしますれすかぁ?」
 アリシアがこれまでの経緯?を話していると、いつのまにか見たことも無い異形の魔物達に周りを囲まれていた。

 魔物達は急に襲ってきた。
 一体どういう事だろう?
 気配を感じなかった・・・
 俺が未熟なのはわかるけど、アリシアも気付いていなかったみたいだし・・・
「とりあえずは、こいつらを片付けるとするか・・・いくぞ!アリシア!!」
「ふえぇ〜、ジークちゃん。ジークちゃんはパートナーらから、アリスのことを『アリシア』って呼ばずに『アリス』って呼んで欲しいれすぅ・・・」
 悲しそうなアリシアを見ると俺はなんだかとても悪いような気がする。
「すまん、すまんな。どうもまだ慣れなく・・・って、んな事言っている場合か!!」
 なんだかなあ・・・相変わらずマイペースなんだよな。
「早く慣れて欲しいれすぅ〜。もう一年以上たつんらよ。」
 アリシアは、頬を膨らまして怒っている。その顔は怖いというか・・・むしろかわいいと思う。この顔を見るためなら、わざと怒らすような事がしたくなるくらいだ。困った顔も、悲しそうな顔もなかなかいい!
(・・・アホか?俺)
 こんなことを考えている場合じゃあない事に気付き、俺は慌てて、今、目の前にいる敵に集中する。
「あうぅ、無視しないれくらさいぃ〜。ううぅ」
「あー分かったから、さっさとこいつらをどうにかしようぜ」
 無視されたと思い泣きはじめたアリシアに呆れながら俺は言った。
「こいつらを倒した後なら聞いてやるから。いまは倒すことに集中しろ!」
「分かりましたれすぅ・・・」
 アリシアは渋々、魔術を使う。
「・・・天使さん!アリス達を守って欲しいの。『防御壁』」
 俺とアリシアのまわりに薄い光の壁みたいなものがまとわりつく。
 しかし、それは俺の行動を制限することが無かった。
「よしっ!行くぞアリス!!」
「はいれすぅ☆」
俺達はたった二人で魔物達に挑んだ・・・。

  2

 倒しても倒しても、次から次へと襲いかかって来る。
「くそっ!まだ出てくるのか?きりがないな」
・・・そう、森に入ってからこの広場に辿り着くまでにも、何度か魔物と戦ったので、
このままでは体力が無くなりそうだ。
「そんなことないれすよぉ?たくさん倒すと静かになりますぅ。それにれすねぇ、れべるあっぷしますれすぅ☆」
「レベルアップ?レベルアップってなんなんだ?」
「気にしないれくらさい〜。とりあえず、強くなるってことれすよぉ。」
よく分からなかったが、そういうことらしい・・・。
「ふえぇ、危ないれすぅ〜。そんな悪いコは、おしおきれすぅ〜。え〜いっ!」
 俺と話しているうちに隙ができてしまったらしいが、こいつらの攻撃に当たるようなアリシアではない・・・トロそうに見えるがなぜかよけれるんだよな。
気が抜けた声で・・・魔物達を軽くあしらっている。
まあ、俺も同じように券を・・・はぅあっ?!間違えた。
 ・・・剣を振り回しているけど、アリシアみたいにポンポンと敵の首を飛ばすことは俺にはできない。これは才能の差だろうか。
それとも・・・単なる慣れの差なのだろうか?
アリシアは10代半ば辺りに見えるが、実は二十八歳だそうだ。・・・俺にはとてもそうには見えない。・・・『ウィザード』だからだろうか?
小さいころに親に捨てられていたのをキャラバンの長に拾われたらしい。
その長が『ウィザード』だったそうだ。
『ウィザード』。それは彼の種族名であり、外見的特徴は白髪で華奢な体が標準的だ。
『ウィザード』は突然変異として生まれてくる。
一応、子供を作ることができるが、それは珍しいことでもし生まれたとしてもすぐに死んでしまうことが多い。
それだけひ弱な子供しかできないのだ。
だからか、『ウィザード』達は『ウィザード』として生まれた子供を捜し、その子供を引き取り『ウィザード』として育てる。
それがこのあたりでの風習だ。
実際、その不思議な能力のせいで、なにもしらない両親に殴り殺されてしまう『ウィザード』の子供もいる。
そういう俺は今年で二十歳になったばかりなのだが、アリシアは外見的には十五歳に見えるせいか、兄妹に間違われる。
・・・白髪の人はこの世界では老人か『ウィザード』でしかない。それ以外は俺と似ているらしい。
・・・ま、まさか・・・・親父の隠し子?!・・・いや、あの親父に限って・・・。
可能性としてはありえることだが・・・。
そうこうしているうちに、魔物は全滅したらしい。
「ふぅ、アリスがんばりましたれすう☆」
「・・・・・・」
 あれだけいて魔物が・・・こんなわずかな時間で全滅?!
 あいかわらずすごい腕だ・・・
 いったい、少し力を入れたらすぐにでも折れてしまいそうな華奢な体のどこにあれだけのパワーが秘められているのだろう?

 そもそもウィザードは非力なはずだ。
 魔法を唱えているわけでもないし・・・
 これは後で知ったことだが、『ウィザード』は他の魔法使いとは違って、魔法ではなく魔術を使い、しかも魔術は使い手によって、呪文を唱えずに簡単な動作で発動させることができるらしい。さらに高位の『ウィザード』になるとその動作も必要無いそうだ。
 それにあと他人の能力も見ただけで分かるし・・・もしかしてアリスは・・・その・・・高位のウィザードだったりする・・わけないよな。
 どう見ても、どじで、おちょこちょいで、天然ボケで、方向音痴で、舌足らずで、そのくせに、意外と強情で・・・とてもそうには見えない。
「遊んれいたらぁ、なんたかアリス眠くなってぇ、気が付いたらみんなとはぐれちゃっていましたぁ〜。てへっ☆」
無邪気に笑うアリシアを見ると見ているこっちまで嬉しくなるような気がする。
「でもでもぉ、ジークちゃんがぁ、迎えに来てくれたれすぅ☆ アリスはぁ、とっても嬉しかったれすの!」
 アリスは俺に抱きついた。
 それほど、俺が来たのが嬉しいみたいだ。
 その様子を見て俺は、アリスを動物に例えると犬・・・犬チックだなぁ。『お手』と言ったらやるだろうか?・・・いつか試してみたい気がする。

「迎えに来たというか・・・俺も似たようなものだ。俺もはぐれてしまったらしい。それにしても・・・妙に手応えの無い奴ばかりだったな。」
俺がとどめを刺した魔物達は見た目ほど強くなかった。
「ジークちゃんが強くなったからじゃあないれすかぁ?アリスはぁ、こんなものらと思いますれすぅ☆」
「そうか。アリシアがそう言うなら・・・気にしないでおこう。」
 アリシアは気配だけで相手の魔術士としての強さがわかるのだ。今回戦った相手は、魔術士ではないが、こういうときのアリシアの言葉は信頼してもいい。
「らからぁ!『アリス』って呼んれくらさいれすぅ」
「あー、分かった分かった。だから、早くあいつら連絡してくれ・・・」
「了解れすぅ〜。もう間違えないれくらさいれすの。」
 アリスは『心話』の呪文を唱え始めた。
 あいつらというのはボルとクリームヒルトの二人だ。
ふたりがどこにいるかわからないから魔術の効果を拡大するらしい。
 今、俺にできることは集中を乱さないようにするぐらいだ。

  3

 ・・・・・・しばらくして・・・・・・

「なっ!?こいつ生きていたのか?」
 俺達が倒したはずのモンスターが再び動き出す。
しかも、『心話』の呪文詠唱に集中しているアリスを狙っていた。
「くそっ、数が多すぎる!」
 ちょうど俺は魔物の群れのど真ん中まで来てしまっていたらしい。
周りはいつのまにかさっきまで倒したと思っていたモンスター達に囲まれてしまっている。俺一人ではどうしようもない。
「あぶない、アリス!逃げるんだ!」
「・・・・・・」
 魔術に集中しているのかアリシアは聞こえていないようだ。
「おいっ、アリス!・・・アリシア〜っ!」
「こらっ!アリスって呼んれって言っているのら!・・・え、えっ?どうなっているのジークちゃん?」
普通に呼んでも気が付かなかったのに・・・
 アリスは周りの様子を見て驚いている。
「やっと気づいたか!とりあえずここから逃げろ!なぜだか知らんが、こいつらはお前を狙っているんだ!」
「う、うん。れも・・・ジークちゃんは?」
「俺はここで少しでも食い止める!」
 それでもアリシアは戸惑っている。
 俺の事を気にしているのだろう。
「・・・分かったれすの。ジークちゃんも無理はしないれくらさい」
「ああ、気を付けろよ!」
「ジークちゃんこそ気を付けてくらさい。『爆炎』!」
 アリスは魔物が少ない方から逃げていく。
 俺もしばらく付いていくが、追いかけてくる魔物を倒すために立ち止まる。
 あの調子なら逃げ切れるだろう。
 逃げ切ることができたら、こいつらも諦めてどこかに行ってくれるといいが・・・。
「ここから先に行かせないぜ!先に行きたければ、俺を倒すんだな!」
 俺は魔物達と一人で戦うことになったが、これまで以上に怪我に気をつけないといけない。今まではアリシアが『小治癒』・『大治癒』の魔術を使って治してくれていたのだ。
「死にたいやつからかかってきな!」
 このときの俺は後の事は何も考えていなかった。ただ、アリスの方へ行く魔物が一体でも少なくなればと思っていた。アリスが逃げた方向に館があることを知らずに・・・。

「うおおおぉぉぉぉっ!」
ザシュッ
「ギィィィィ」
 また一体魔物と倒す。
「はあっ、はあっ、はあっ。」
 倒せば倒すほど、魔物が強くなってきている。
「くそっ!いったいどれだけいるんだ?」
 そろそろ俺の体力が尽きかけている。
「やばいな・・・」
 俺が限界を感じたとき・・・

 チュドーン!チュドーン!チュドーン!

「ふぉっふぉっふぉっ!わしの特製火薬玉の威力はどうじゃ!」
「・・・うるさいだけです。」
「そういうものじゃ!」
 ドワーフと女戦士の二人組がそこにいた
 ボルとクリームヒルトの二人だ。
「・・・遅いじゃあないか。」
 やっと来た二人に文句を言う。
「しかたないじゃろう。気が付いたらお主達が急にいなくなるからじゃ。」
「そうです。いったいどこをうろついていたのですか?」
 ・・・やっぱりこうなるか。
「すまん、よくわからないんだ。気が付いたときには一人になっていた。」
 俺は素直に謝る。
「・・・まあ、いいでしょう。それでアリシアは?」
 どうやら許してくれたみたいだ。
「ああ、アリスはこっちに逃げてもらった。どうやら狙われていたみたいだったからな。」
「なんじゃと?!そっちは館がある方向じゃぞ!」
「・・・そのようですね。このままではアリシアは危険です。」
 淡々とクリームは言う。
「きゃああああぁぁぁれすのぉぉぉぉ」
アリシアの悲鳴?らしき声が森に響いている。
「・・・・・・なんてタイミングだ。まるで狙ったみたいに・・・」
「そんなことを言っている場合ではないじゃろう!ここはわしらに任せて早くアリシアの所にいくんじゃ!」
それとも、あなたがここに残りますか?アリシアはこんなときにはジーク、あなたに来て欲しいと思いますが・・・」
・・・ボルとクリームの好意はありがたく受け取っておこう。
「わかった。ここは任せる!」
「ジーク!がんばるんですよ!」
 クリームの声を背に受け、俺はアリスの元へ急いだ。
 館には本当に真っ直ぐ行くだけで良かった。
「放してくらさいれすぅ!放すれすのぉ!」
俺はアリスの声が聞こえる方へ急ぐ。
 アリスは丁度、玄関の前辺りにいた。
 足を掴まれ、逆さまにぶら下げられている。
 つかんでいる男からは漆黒のオーラ立ち上っている。
「ジークちゃん・・・来て・・・くれたんら。」
「ほう、やっときたか。」
 男は嬉しそうに言う。
 アリスは俺が来たのを見て安心したのか、気を失ってしまった。
アリスをここまで追い詰めるとは・・・強い。
「来ないと思っていたが・・・少し見直してやろう。」
「好き勝手に言いやがって・・・アリスを放せ!」
「いいだろう。こいつにはもう用は無いからな。私はこいつの魔力よりも、お前に眠っている力のほうが欲しい。」
 男の勝手な言いぐさに俺は腹が立った。
「俺はそんな力なんか知らない!」
 確かに俺の一族には不思議な力がある。
『ウィザード』とはまた違った力だ。
 俺の一族はだいたい十五歳で成人する。
 そのくらいで一族の力が『覚醒』するのだ。
 しかし、俺は『覚醒』しなかった。
 成人してから一年たっても、二年たっても・・・『覚醒』しなかったのだ。
 当然、能力欠落者として一族から疎まれ、婚約も解消された。
だから・・・
「眠っている力って何だ!俺は一族の力を持っていない能力欠落者だぞ!」
「ふむ・・・まだ『覚醒』していないのか。さすがはジーゲムント。己が死んでもいまだに『封印』の力は衰えていないとは。」
「なっ?!」
「『なぜ親父の名前を知っている!』とでも言いたいのだろう?それはな、あいつとは親友だったからだよ。」
そう言えば聞いたことがある。あの親父に友がいたことを・・・しかし、

「だったらなぜ?!」
「力が欲しいのだよ。この世界を作り変えるほどのな!」
 男のオーラが一気に増大した。
 まるで暗黒の世界に足を踏み入れてしまったみたいだ。
 か、体が動かない?あの男のオーラのせいか?
「情けないものだな。この娘でも動くことはできたぞ?」
 必死に力を振り絞る。
 だが、俺は動けない。
「くそっ!なぜ?なぜなんだよ?!何で動けないんだ!」
「見苦しいな。・・・そうだ。お前の力の覚醒の手助けをしてやろう。確かお前達の能力は仲間が危機に陥ると発動しやすくなるそうだな。」
 まさか・・・
「そういう訳で、この娘には何の恨みも無いが・・・死んでもらおう。」
「・・・やめろ、やめてくれ。それだけは・・・」
 男は何も無い空間から剣を出す。
 それをアリスの胸に突き刺した。
 男はアリシアを放すと、あざ笑うように顔を歪めて消えていった。
「中で待っている。」
 そんなことをいっているみたいだった・・・。
地面に落ちたアリスを中心に赤い液体が広がる。
「うわああああああぁぁぁぁぁっ!!」
 こんなことって!こんなことってないじゃないか!なんで、なんであいつが!アリスが死ななきゃなんないんだよ!なんでなんだ!
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
 突然、俺の体が白色に輝き始める。『あの男』が残した呪縛が解け、力が『覚醒』する。
「遅いんだよ。遅すぎるんだよ!もっと早く目覚めてくれれば、アリスは死ななくてすんだのに!」
 どんなに嘆いてもアリスが生き返るわけでもない。
 もし、行き帰るとすれば、それは奇跡だろう。
 奇跡はめったに起きないから奇跡なんだ!!
 ・・・どんな形にしろこの戦いに決着を着けるべきだろう。この力が目覚めるきっかけになったアリスの死を無駄にしないためにも・・・

  4

 俺はあの男がいる部屋に辿り着いた。
 途中、今まで戦った魔物の上位種だと思われる魔物達と戦闘になったが『覚醒』した俺の敵ではなかった。
「覚悟するんだな。俺はあんたを許せない!」
「どうやら、『覚醒』したようだな。さあ、私の力の糧となれ!」
 突如、男の周りに無数の漆黒の光の球が出てくる。
 それが俺をめがけて襲いかかって来た。
上下左右から大気を切り裂いて迫ってくる。
それを俺はあるものは剣で弾き返し、またあるものは左の拳で叩き潰した。
左手が多少痺れたが、何の問題無い。
しかし、部屋の中なので俺が弾き返した球や、避けた球によって壁や天井が壊れていく。
 たまに大きな破片が落ちてくるのでうかつに近づけない。
その心に気が付いたのか、男は残虐な笑みを浮かべた。
(・・・まずい、破片に気を取られている間に何か大技を仕掛けるつもりか!)
 「ここではまわりを気にして、存分に戦えまい。いい場所に案内してやる。」
男はそういって呪文を唱え始めた。
 破片を盾にして攻撃されると思っていたので驚いたが、場所が変わると言うことは俺にとってもありがたかった。
 バチィと、静電気が弾けるような音がすると、景色が変わった。
 俺と男が立っていたのは、真っ暗な空間だった。
 二人以外何も存在していない。
 ただ漆黒の空間が広がっているだけの不気味な空間だった。
 空間そのものに、言いようもないプレッシャーを感じる。
 「くっ!」
 立っているだけで気分が悪くなってくる。
 俺は剣に意識を集中させた。
 その剣から光があふれる。
 男をめがけて剣を振るうと、剣から光が迸り、男に直撃する。
「どうだっ!」
しかし、直撃のはずなのに光は四散しただけだった。
「ヒャハハハハハッ!」
 次の瞬間、侠気じみた笑い声を上げて、男は俺に向けて手を突き出す。
刹那、鈍い衝撃波が飛んでくる。
 剣で弾こうとしたが、逆に剣を折られてしまった。
「くそっ!」
 必死に体制を立て直そうとするが
「潰れろよ」
 男が広げた掌をぎゅっと握り締めた瞬間、俺のまわりの空間からとてつもない圧力が襲いかかって来た。
「うわああっ!」
 体がばらばらになりそうな激痛が俺の体に襲い掛かる。
 筋肉と骨が軋みを上げている。
「この程度で負けてたまるかぁっ!」
 力を振り絞り、重圧を弾き飛ばすが、すぐにまた重圧に取り込まれてしまった。
しかも先程よりも強烈な重圧だ。
「ちく・・・しょうっ!負けられない・・・俺は負けられないんだぁ!」
 唐突に、重圧が消えた。
痛みに顔を歪めながら男を見ると、右手の人差し指に赤い火が灯っている事に気が付いた。
 不吉な気配を感じて、反撃に出ようとしたが、それよりも早く、右手をボウガンを撃つみたいに構え、こちらに向かって火のついた人差し指を突き付けて、
「死ね」
 子供が遊ぶように、引き金を引く真似をした。
次の瞬間、俺の全身を、紅蓮の炎が包みこんだ。
あまりもの激痛に意識が真っ白に弾け飛んだ・・・。
『ジークちゃん。』
 アリスの声が聞こえる。
 俺は死んだのか?
『違いますれすぅ。心話の術を使っているんれす。ジークちゃんがいる空間に入れないんれす。らから、いまからぁ、アリスの言う通りにしてくらさい。』
 この喋り方は間違いなくアリスだ。
『今から、何か強く思ってくらさい。別に意識を集中させるらけれもいいれす。アリスはぁ、アリスのことを思って欲しいれすぅ。きゃっ☆』
『・・・わかった。』
『はい!お願いしますれす。』
 ・・・・アリスが生きていた。・・・・あいかわらずだ。いつもと変わらない。
 そもそも、最初から死んでいないのかも・・・でも、いいんだ。生きているのなら。
 早く、早く会いたい・・・。
『ふえぇ〜っ、今からそっちに行きますれすぅ』
『ああ、早く来い!』

と、俺の意識が覚醒し、炎を通したはるか前方に、あの男の姿が見える。
体を焼く熱さが戻ってきたが、柄を握り締め、懸命に苦痛と戦う。
 柄に意識を集中させる。
アリスがここに来るのを手伝うのだ。柄に力が流れこみはじめ、残った刃にひびが入る。
なにかすごい力が迫ってくる。
「なにぃ?!」
男が作った空間に小さな穴があく。それだけで十分だった。
その穴からアリスは入って来た。
「ばかなっ!」
 男は信じられないような顔をしている。
「よお、早かったな」
「はいれすぅ。アリス到着したれすぅ!」
アリスは微笑んで言う。
「皆のところに帰るれす」
「ああ、ゆくぞ!」
 俺の体は白い光を放ち始めた。
「アリスも手伝いますぅ。」
 アリスの背中から羽が広がる。
 どうやらあの羽はは魔力収集装置みたいなものらしい。
 この空間から集めたエネルギーを俺に送る。
 集まったエネルギーのおかげで光は膨れ上がる。
 柄に残った刃が完全に砕け散り、光の刃が出現する。
「な、なんだっ!あの光は?!」
 その光に照らされた男が、両手で頭を抱えて、狂ったように激しく振り始めた。
怯えているのだ。光に。
「く、来るなっ!溶ける!私が溶けてしまう!」
 恐怖に顔ゐ引きつらせた男には、幾つもの深いしわが刻まれていた。
 力をすべて身に纏った俺は、アリスと一緒に男をめがけて飛翔する。
 無数の黒い光の球が飛んできたが、そんなものはもはや敵ではない。
 光の球は、俺に触れることすらできず、次々に弾けて消えた。
「来るなあああっ!」
 男が絶叫をあげながら防御壁を作り出した。それは、最後の悪あがきに過ぎない。
「はあああっ!」
 気合とともに突き出された剣は、防御壁を粉々に粉砕して、そのまま、男の、胸に突き刺ささった。
 男の体は光に溶けるようにゆっくり消えていった。眩い塵となって。

  エピローグ

「ところでアリス。一体その羽はどうしたんだ?」
 前の戦いの途中からアリスには羽が生えていた。
「それはれすねえ。アリスはぁ、死んじゃった見たいなんれす。ただ、契約していた天使さんが、換魂の法を使ってくれたんれす。アリスの代わりに死んじゃったれすの・・・。そのときに天使さんは、自分の能力をアリスにくれたんれす。」
「なるほどな。しかしその羽、邪魔じゃないか?」
「いいじゃないですかぁ〜。それにアリスは、この羽さんを気に入りましたぁ〜。」
 嬉しそうに羽をパタパタと羽ばたかさせている。
 まるで尻尾を振っているみたいだ。
 純白の羽が太陽の光を反射させてキラキラと輝いて見える。
「・・・確かに気に入るだけのことはある」
「えへっ、ありがとうれすの。そんなジークちゃんの事らい好きれすぅ☆」
アリシアは俺に抱きつく。
「おい、そこの二人!いちゃついとらんでさっさとこんかい。わしは早く次の町にいきたいぞ」
「このペースで行くと・・・どうやら、一月以上かかりそうですね。」
「なんじゃと!それでは祭に間に合わんではないか」
「・・・そのようです。」
淡々とクリームヒルトは言う。
あいかわらず無表情というか興味なさそうだ。
「・・・もう、行くとするかのう。あの二人もそのうち気づくじゃろう。」
「・・・賢明な判断です。いくらあの二人でも一本道で迷うことはないでしょう。」
ボルとクリームヒルトはさっさと行ってしまった。
どうやら当分はあてもない旅をしないといけないらしい。
「・・・あっあのさ、アリス?そろそろ放してくれないか・・・」
俺はまだアリシアに抱き着かれたままだった。
「らめれすのー。もう少しこのままれいてくらさい〜☆」
「このままだと、また見失ってしまうぞ?」
「それは困るれすぅ。ちょっともったいないれす・・・。」
 とりあえず、ボル達に追いつくことが肝心だ。
 こんな生活も悪くない。これはこれで楽しかったりする。
「ふえぇっ、待ってくらさいれすの〜。ジークちゃんも急ぐのぉ〜」
「ああ!」
「ひろいれすの〜!置いていかないれくらさ〜い!!」
・・・アリシアの元気な声が街道に響き渡った。

  終?





後書き

むのう :いやー、なんとか終わらせることができました。途中
     からどこにでもありそうな話になってしまい、つくづ
     く精進が足りないと思いました。

アリシア:・・・途中かられすかぁ?アリスは最初からのような
     気がしますれす。
 アリスはぁ、もっともっとぉ、活躍したかったれすぅ!

むのう :なっ!?あのまま旅に出たはずじゃあ・・・それにど
     うしてここに?

ジーク :まあ、どうでもいいじゃないか。終わったんだ
     し・・・

むのう :そう言うお前こそ何でこんなところにいるんだよ!
     ジーク!

ジーク :いや〜、アリスと旅をしているうちにいつのまに
     か・・・

アリシア:それじゃあアリスだけが悪いみたいじゃないかぁ〜。
     ジークちゃんだってこっちにいけば近道がれきるって
     いってどんどん先にいったですぅ!

ジーク :そうだとしても俺には異世界に迷いこむなんて芸当は
     できないぞ?

むのう :だ〜!ここは今回の話の反省をするところなの!喧嘩
     するのなら消すぞ!
     それがいやならおとなしくするんだ!

アリシア:ジークちゃん何とかしてくらさい〜。あの人恐いれす
     よ〜(泣)

ジーク :・・・すまない。俺にはどうすることもできない。い
     くら、俺の一族の能力が覚醒したと言ってもな・・・
     それにこの力を作ったのはこいつだぞ?

アリシア:ふえぇ〜?!らいピンチってことれすかぁ?困りまし
     たれすぅ・・・

むのう :はーっはっはっはっ!俺の恐ろしさに今ごろ気が付い
     たのか!

ゴスッ

むのう :はぐぁ?!

 後ろから誰かに殴られ気を失ってしまうむのう
その後ろには血のついた釘バットを持っているクリームヒルト
の姿が・・・

クリーム :・・・どうやら間に合ったようですね。

ボル   :そうじゃな。

アリシア :ありがとうれすぅ。おじいちゃん、お姉ちゃん。

ジーク  :しかしよぉ、確かに危なかったがそこまですること
      はなかったんじゃねぇのか?

クリーム :・・・甘い、甘いですわ、ジークフリート!私のか
      わいいアリシアちゃんに、もしもの事があったらど
      う責任をとるつもり?

ジーク  :せ、性格が違う?!二重人格なのか?

ボル   :ああ、そうじゃ。しかしのう、このむのうな作者が
      締め切りに間に合わすためにその部分を省略したの
      じゃよ。

アリシア :ボルおじいちゃんの活躍するところも省略したらし
      いれすう。

ジーク  :そうだったのか・・・もしそれでも間に合わなかっ
      たら、俺が消えたんだろうな。でもそれって話が進
      まないから・・・

クリーム :アリシアちゃんも消えてしまうわねぇ。

ジーク  :ク、クリームさん?!い、いやだなぁ。笑った顔で
      バットを構えないでくださいよ。それにむのうが何
      かいいたそうにしています!(汗)

クリーム :フッ!しかたないわね。聞いてあげましょう。

むのう  :ぼそぼそっ。

クリーム :・・・・・・。

むのう  :ぼそぼそぼそっ。

クリーム :・・・・・・・・・。〈怒〉

ばきぃっ!どすっ!どごっ!

むのう  :ぎょえええええええぇぇぇぇっ!

クリーム :アーハッハッハッハッ!

ごすっ!どがっ!べきぃぃっ!

ボル   :え、えぐいのう・・・。

ジーク  :じいさん・・・。俺達もああなっていた可能性もあるんだ・・・。

ボル   :無常じゃのう・・・。

アリシア :最後にむのうさんがいいたかったことなのら〜♪
      題名についてなのぉ
      『某ゲームの中にでてきたマンガのセリフを祐〇が
      変えたところより。
      決して『下痢』ではありません。しかし、そこが
      原点です。
      ネタが分かってしまっても気にしないでください。
      (笑)
      ちなみに本文の内容とは関係ありません。
      ただ、そこから連想しただけです(爆)』
      らそうれすぅ〜☆
      それれは皆さん。さよ〜なられすぅ〜♪

ジーク  :ここまで読んでくれてありがとう。楽しんでくれた
      ならば俺は嬉しい。


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