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第3話

ロストファンタジーワールド

作者:ヤマト
挿絵:碧瑞鶏




第3話  ミユキ、目が

――― 謎の建物 ―――

「――また……同じ廻りをするのか………? あまりにも悲しい………」

赤黄い水溶液のビーガーに包まれている人………


――― 現・地球 ―――

「そうですか……… ここの所音沙汰無しですか………」
数台のパトカーが群れている。
ニュースでは、

「こんばんは、ヤマト衛星TVです。
 今日の午後、
 中螺 萄武、
 伽摩 嵐、
 真能 娃魅屡、
 内藤 御雪、
以上の4名が屋上で行方不明になったと情報がありました。
今、警察が捜索中ですが、ひき続き何かがわかったら放送します。
――では次の殺人について――

プツンッ
萄武の弟、望がTVを消す。
「お兄さんは帰ってくると思う?」
「ええ………、萄武の帰るべき所はこの家ですから…… 帰ってくるでしょう」
母が言う。
「そうだよね……、早く帰って来てよ、兄ちゃん……」

――― バイバイ
萄武 ―――

"――― 嬉しい………
また、あなたに
会う事ができた ―――………"

女の流れる暖かい涙が水に波紋を作る、
「あなた……は誰………?
  初めて会うような顔………
    ―――ではない―――?」

 すべてが真っ暗となる。
ようやく目を覚ます萄武。
あたたかい光が肌に快く当たる。
「………ん………?」
起き上がる。
「ここは……屋上……、そうか、俺、寝ていたのか」
しかし、手についている地は温かみを感じ、さわさわなぬくもりが伝わっている。
「…………………」
「…………………」
「―――――――――って」
「野原じゃねーかッ!?」
地球で言うとモンゴル草原みたいな境界線がある雄々とした広さ。
「なんで俺はこんな所に…………?」
萄武は理解しようがなかったので他の人を当たってみた。
少し遠くにアミがいた。
「アミ!」
「あ!萄武!」
「お前もここが何処なのかわからないのか?」
「そうよ。いきなりココってわかんなくなっちゃう!」
「――ってェ事は確か屋上にいたのは俺と、アミ、嵐、ミユキの4人だったよな?」
「じゃあ、嵐やミユキもここにいるのかなぁ」

「オーイ! アミ、萄武―!」
遠くから嵐の声がし、行ってみた。
「よぉ、お前らもいたか。さっきからミユキの様子がおかしいんだ」
「え?」
アミと萄武は嵐の後ろにいるミユキを見る。
ミユキは頭を抱えている。
「うう…………」
「大丈夫!?ミユキちゃん!」
「うっ……あっ………… 光が……… 光が………」

――― 願いを叶えて欲しいか? ―――

キィイイイイイイインッ

そして、何事もなかったようにミユキは静かになる。
「大丈夫か? ミユキ」
「うん……、なんか目が……モヤモヤしてて………」
ミユキは包帯をかけているので真っ暗のはずだ。
「………? モヤモヤ? それって目が?」
「そうよ。……、なんなのこのいっぱいの光」
「ねぇ、ミユキちゃん、その包帯とってみて」
アミが念のために言った。
「え?包帯を? わかったわ」
ミユキは包帯を取る。
すると、目が薄っすらに開いていた。
「え………?」
「あれ………?
 何かがぼやけて見える………?」
嵐は言った。
「思いっきり目ェ開けてみたら?」
「うん………」
パチッ

「―――――ッ!!」
ミユキ自身が一番驚いていた。
目が見えるようになったのだ。
「う………うそ…………」
ミユキは涙でいっぱいだった。
この10年以上も目が見えなかった暗闇の中でしか生きていなかった人にとっては最高の
喜びである。
「ウソみたい…………、太陽も草も花も人も全て見えるようになるなんて………」
「よかったね、ミユキちゃん!」
「ありがとうアミちゃん! アミちゃんってかわいい人だったんだね!」
「えっ? やだ……そんなぁ、うん、確かにそーだけど!」
笑う2人。
少し間を離す萄武と嵐。
「な萄武、予測通り美人ではないかッ!」
「ミユキの喜びよりもそっちの喜びかい!」
「うっせーなー! 俺は女だよ女!」
無言の萄武。
「さぁさぁ、ミユキちゃん、
 目も治った所で行きましょーか!」
「うん!」
てくてくてくてく…………
   てくてく………
     ピタッ
「………………………………」
「だからココ何処やねェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んッ!!!!」
叫ぶ嵐。
話は原点に戻った。

4人は輪になって座る。
「…………さて、この状況はどうする?」
混乱を押さえて言う嵐であった。
「まず、どうしてここにいるのか整理しみよう」

「俺らは屋上の階段にいた。そこで萄武が『屋上で何かある……』と言い、
 屋上に行き、俺らも行った。そしたら、布でおおっている人がいた。
 空は染色にゆがんでいた。光が出てきて……… 気づけばここにいた………」
「あの女らしき人は
 "――また会えた―――………" と言っていたな」
「?」
「?」
「?」
3人は知らない顔をする。
「―何それ? そんなの聞いてないし、なんで女の人ってわかるの?」
「へ? ちゃんと言ってたんだぜ? それに、布から中が少し見えていたし………」
「声なんてしなかったよ」
ミユキ。
「だいいち、布の下は真っ黒だったからわからねーよ」
嵐。
「おかしいなあ………?」
萄武は鮮明にあの言葉が残っている。

  ―――また会えた………
      私の…………――――

  ―――嬉しい……
     また、あなたに
         会う事ができた――………


「―――? 何だろうあのセリフ………」
「萄武、とりあえず行動してみよう」
「ん?あ、ああ………」
一応、待ってても意味がないということで行動することにした。
「いや〜、しかしねぇここの空気、むっちゃうまいな〜〜」
「そうだな。疑問があっけどよ……」
「ん?何だ?」
「こんな境界線ある地って日本にはないよ?」
「そーいえばそーよね。あると言っても外国……例えばモンゴルとかだけだし……」
アミが言う。
「…………」
あえて深くは考えたくないと意見する皆。

――― 5分経過 ―――

「な……なあ、なんでどこもかしこも境界線ばっかなんだ?」
「し……知るかよ……… やっぱりここは日本じゃないし………」
「まさか、RPG………、幻想大陸だったりして」
「ははは、そんな事はないよ。現実を見ろよ現実を」
萄武が言う。
「そーだよね? まー、私の考えすぎか、ハハハハハ」
そこに小さい動物が現れる。
キョロキョロ。
萄武らを見る。
ニカッと笑う。
そして去る。
「…………」
「質問していいかしら……?」
アミが手を挙げる。
「何だい……アミくん」
「なんで角が生えているのよ、額に」
「ってゆうかアレ、ドラムポン・クエルストに出てたモンスターじゃ………?」
「多分、俺ら目ェ疲れているじゃないかなぁ?」
「そうよね、そうでなきゃ………」
 ズシーン
    ドシーン
少し遠くに恐ろしい牙をした恐竜のようなデカイ動物(?)が現れる。
「あー、あれもドラムポン・クエルストに出てたよなー」
「そーだなー、やっぱ夢かなコレ」
「はははは………」
でも恐竜らしき動物が近寄って来る。
不安が限界にまで高まる四人。
「夢だったら痛み……はしないよねぇ……?」
「ま……あ……、そうだろ………」
それは萄武らに近寄ってきた。
大きな目をパチパチとまばたきする。
声が出せなくなる。
「……………」
それは嵐に寄る。

 只今の嵐の不安度 96%

「グルルル…………」
不気味な声をたてる。
――98%――
ペロリ
嵐の横顔を大きな舌でなめる。
ピクピクとする嵐。
それは眼を今までより大きくひらかせた。

―人間は危険の極端におちいると、五・六感の感覚は限界を超えて発達するという―

      ――不安度  200%ッ!!――

「うっわあああああああああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
叫び、皆猛烈なる速さで逃げる。
「ガウ!」
ドズッ
 ドズッ
追いかけるそれ
ダダダダダダダダッ!
一目散に逃げる四人。
「こーゆーパターン、
 よくあるパターンじゃねーかッ!漫画でッ!」

 そこに一人の男が現れる。
「!!?」
それは足を止める。
「大丈夫ですか?四人」
「あんたは……?」
金髪の髪で眼が青く、耳がとがっていて、いかにも剣士という服を着ていた。
「あっ!このパターンも確か、危機におちいるとき、誰かが助けてくれるっていう………」
「それってLOS●―SP●CE―TIME?」
「そーそー、
 おもしろかったよなアレ」
金髪男は言う。
「皆さん。退って下さい。僕がこの"ドロイヌボ"を倒しますから!」

突然の地で突然の恐竜らしき動物、突然の金髪男。

――― 第3話・完 ―――

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