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風の錬金術師「ティア」     作 CROW




「どなたか知りませんが・・・とにかく助けてください!旅のお方。」

暖かい木漏れ日の漏れる森を歩いていていきなり目の前の草むらから現れた男性A。

中年のおじさんは、年下でさらに女の子の私に泣いてすがる・・・。

「え〜っと・・・。」その人をなだめるようにいつも通りのセリフを言ってしまう・・・。

「と・・・とりあえず、場所を変えて話をききますから・・・。」

曖昧で引きつった顔で言葉を無意識に紡ぐ・・・「口は災いの元なり」・・・。

男の人と共に向かう村は心当たりがあった。というのも私もそこへ向かっていたのだが・・・。

場所は山奥にある名も無い村、だが近くに、とある薬草があるというのを聞いて半信半疑訪れたのだ。

が、情報収集というのは大切なことである、というのも。



この村は年に一回だけ獣の群れに襲われるらしいのだが、よりにもよってその一回が今日とは・・・。

せめて時期ぐらい調べておくのだったと走りながら今、猛烈に後悔している私・・・。

男の人の話によると、例年は襲われると言ってもただ農作物が荒らされるだけで。

大きな被害もなく追い返せるのだが、今年はどうも、数が多く、追い返そうにも歯が立たず、

こうして応援を呼ぶために彼は走っていたらしいのだが・・・そこで何故私に目をつけるかなぁ・・・。

そりゃぁ、多少冒険者っぽくはあるが、本業は錬金術士で、今回だって獣退治や武者修行ではなく、

珍しい薬草の噂を聞いて探しに来ただけなのに・・・。

あーもぅ・・・目の前の男の人も情けないが、断れない自分も情けない・・・。

(あーもぅ、どうしよう・・・数によれば手持ちのアレでどうにかなるだろうけど・・・。)



ショルダーバックの中で揺れるアレの数を頭の中で数える。

例え獣退治に使い切ったとしても家までそんなに離れていないから帰り道は大丈夫だろう。

とか、考えていたら村に着いた。と言っても大きな教会の裏口だが・・・。

男の人に連れられて中に入る、少し湿っぽい空気を感じる。

村の人がいた。・・・11・12・13・・・25人。

「みんな!助けを呼んできた!そこであった旅の錬金術士ティアさんだ!」・・・おいおい・・・

反応無し。そりゃあ、やっと来た助けがこんなに若い小さな女じゃムリもないか・・・。

とりあえずだれにともなく私は話始める。

「とりあえず、獣はどんなので数はどれくらいなんですか?」

「・・・獣と言うのは狼程度なんですが数が四十ちょい、いますのじゃ・・・。」





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