学校長式辞

第30回卒業証書授与式 学校長式辞

 例年になく東日本では豪雪であった厳しい冬の寒さも緩み、この北摂丘陵に春の息吹が満ち始め、躍動の気配を漂わせる今日の佳き日に、兵庫県立北摂三田高等学校第30回卒業証書授与式を挙行できますことは、この上ない慶びとするところであります。本日は、公私ともご多用の中、育友会長様、同窓会長様、学校評議員様、中学校長様、そして、ここまで支えてくださいました保護者、ご家族の方々のご臨席を賜りましたことは、卒業生はもとより、在校生、教職員一同、感謝の念にたえません。高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。

 保護者の皆様、ご家族の皆様にはお子様の晴れの姿を目にされて、さぞかし感無量のことと存じます。教職員一同 心よりお祝い申し上げます。また、これまで、本校の教育活動のために多大なご支援、ご協力を賜りましたこと、全教職員を代表し、改めて御礼申し上げます。 ただいま卒業証書を授与しました271名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。この北摂三田高校で過ごした年月は、皆さんにとってかけがえのない、また思い出深いものであったと思います。卒業式に臨み、皆さんの脳裏にはどのような思い出が過ぎっているでしょうか。友との友情を深め合った北摂祭、修学旅行などの学校行事のことでしょうか。気を抜けない日々の授業、週末あるいは長期休業中に追われた課題でしょうか。暑い夏は汗を拭きながら、寒い冬はかじかむ手をさすりながら頑張った部活動のことでしょうか。いずれも、皆さんはお互いに「切磋琢磨」しながら、バランスのとれた「文武両道」の3年間であったはずです。この3年間の思い出は、これからの人生の中で自分を高めていく良き糧として、心に残しておいてください。 さて、一昨年度、皆さんが1年生の時に、本校は創立30周年を迎えました。人で言えば、30歳は社会の中核としてこれから重責を担い、社会を動かしていくべき世代。これからの日本を背負うために伸びていかねばならない世代です。本校は国際社会や地域社会の中で、日本の将来を背負うリーダーとなる人材を育成するよう、今後、様々な方策をもって教育活動を推進してまいりますが、これから本校を巣立っていく皆さんは、進みゆく社会の様々な場所や分野で優れたリーダーとなって、その分野を牽引し、動かしていただきたい。本日がリーダーとなるべく、新たな努力への決意を固める最初の日にして欲しいと願っています。 ここで、卒業される皆さんへの餞の言葉を二つ贈ります。

 一つめは「人との繋がりと感謝の心」です。
 一口に卒業と言っても、皆さんが今日のこの日を迎えるまでの道のりを考えるとき、それは決して一様ではなく、それぞれに様々な苦労があったことと思います。しかし、皆さんは今日、保護者、ご家族、教職員、この会場の全ての皆さまの大きな祝福の中で、この日を迎えることができました。この喜びを決して忘れることなく、これまで育んでいただいた方々に感謝して、明日からまたそれぞれの良き人生の日々を重ねて欲しいのです。尼崎で地元教育に励まれた上村秀男氏は 「さし昇る朝日を拝む、神仏を拝む、人を拝む。「拝む」ということは、あらゆる生物の中で人間だけのなし得る尊い行為である。」と言いました。「拝む」という行為は「願い」「祈り」でもあり、「感謝」でもあります。今後も、自分の周りのあらゆること、あらゆるものへの感謝を忘れないでほしいと願っています。

 二つ目は「これからも夢と目標を持ち続けてほしい」です。
 これまで私は、全校集会等でこのことを重ねて伝えてきました。 「夢がありそれを実現させる意欲は繁栄の原点である。」と言う言葉があります。夢や目標がないところには、ビジョンや計画もなく、ビジョンや計画のないところには行動もなく、行動がなければ、成果も成功もありません。行動の原点ともなる夢や目標、「志」をしっかりと持って、これからの人生をたくましく歩んでもらいたいと思います。 これら「感謝」と「夢と目標」を考えさせられる詩を紹介しましょう。詩人坂村真民が残した「生きることは」という少し長い詩からの一部です。

生きることは 自分の花を咲かせること
  風雪に耐え寒暑に耐え
だれのものでもない 
自分の花を咲かせよう
生きることは 光を見出すこと
この世は決して闇ではなく
  必ず光が射してくる
 そのことを信じ
  勇気を出してゆこう
生きることは 愛に目覚めること
人を愛し世を愛し万物を愛し
  二度とない人生を
 愛の心で包んでゆこう
生きることは有り難いこと
 生かされ生きる不思議を知り
    すべてに感謝し 手を合わせてゆこう

 卒業生の皆さん、いよいよ巣立ちの時がきました。皆さんの人生は素晴らしいものであるとともに、厳しいものになる可能性も秘めています。皆さんには嬉しいときもあれば、悲しいときもあるでしょう。疲れることもあれば、じっくり考えたいときもあるはずです。迷うこともあるに違いありません、そのような時、いつでも北摂三田高校を訪れてください。皆さんが過ごしたこの学舎(まなびや)は、静かに、そして温かく皆さんを迎えてくれるはずです。母校としての誇りを持ち、懐かしんでほしいと願っています。また、北摂三田高校は、なによりもそのような学校でありたいと強く念じています。 本日、北摂三田高校の校門を出て、素晴らしい人生に繋がる道を、胸を張って進んでください。皆さんの新たな一歩と、それに続く輝かしい未来に、心から期待して式辞といたします。


平成30年3月1日                        
兵庫県立北摂三田高等学校長
中村 晶平