在校生送辞
第29回卒業証書授与式  送 辞

 冬の寒さが和らぎ始め、陽の光やそよ吹く風の暖かさに春の気配が感じられる今日の良き日。この学び舎を巣立ってゆかれる二十九回生の皆さま、ご卒業おめでとうございます。こうして先輩方の姿を目にしておりますと、数々の思い出が溢れんばかりに浮かんでまいります。

 先輩方との初めての出会いは私がまだ中学生だった頃のこと。オープンハイスクールの当日、道に不慣れだった私を優しく道案内をしてくださったのが、セーラー服に身を包んだ一人の先輩でした。その時、私の心には「感謝」の気持ちだけでなく、「憧れ」の気持ちが強く刻み込まれた気がします。さらに説明会後の部活動見学では、貴重な練習時間を割き、私たちに明るい笑顔を見せながら丁寧に説明してくださいました。私が「北摂三田高校へ進学したい」と思った大きな要因の一つが先輩方との出会いだったのです。


 私たちが入学した後も、先輩方は私たちの憧れでした。年齢が一つ違うだけなのに、どれほどその背中が大きく見えたことでしょう。行事のたびに先輩方の存在の大きさを知ることになりました。

 北摂祭文化の部では、素晴らしい舞台を見せてくださいました。新クラスになったばかりの四月から準備を始め、休日も多くの人たちが大道具の政策などに励み、団結力の強さを感じました。当日のステージでも一年生の時の合唱を取り入れるクラス、エンドロールで全員が肩を組んで歌うクラスなど、演出にも工夫が凝らされていました。また体育の部では、仲間を応援する声や笑顔がグラウンドに溢れ、学年全体がひとつになっているように感じました。中でも綱引きで三年連続優勝を遂げられた七組のみなさんの強さは忘れることが出来ません。

 また人間科学類型の課題研究発表会では、図やグラフを多用し、実践例が分かりやすく解説されていて、聞き手を惹きつける発表ばかりでした。また、質疑応答もポイントを突いた鋭い質問が飛び交うなど活発に行われ、圧倒されました。いま私たちも課題研究に取り組んでいますが、先輩方のレベルの高さを痛感しています。

 生徒会活動では、執行部としてお昼休みに伺った時も、「どうしたの?」と優しく声をかけてくださいました。北摂祭の忙しい時期でいっぱいいっぱいになっていた私でしたが、思いやりあるその言葉にずいぶん勇気づけられました。二十九回生最後の北摂祭に生徒会としてお手伝いできたことを本当に誇らしく思います。

 先輩方はいつも先のことを考え、私たちが気付かない所にも気を配り、行動していらっしゃいました。さらに行事で見せる団結力、新たなものを生み出そうとする創造力などは到底私たちの及ぶところではなく、そんな先輩方のようになりたい、少しでも近づけるようになりたいと、頑張ってみては失敗することの繰り返しでした。しかし、失敗した時も励ましてくださるのは先輩方でした。自分の時間を割いて、出来るようになるまで何度も丁寧に教えてくださった先輩方。これまで私たちが成長できたのは先輩方の支えがあればこそと、感謝の気持ちでいっぱいです。

 私たちよりずっと大人で、順風満帆な高校生活を送っていらっしゃるように見えた先輩方。皆さまにも悩みはあったのでしょうか。「自分は後輩からどんな風に見られているのだろうか」と悩んだ日がありましたか。部活動だけでなく、勉強や人間関係がうまくいかず、一人で涙した日がありましたか。私たちがいま抱えている悩みを先輩方も一度は経験し、悩んできたはずです。しかし私は学校や図書館が閉まるまで勉強に打ち込んでいる先輩方を見てきました。早朝から下校時刻まで部活動の練習に励む先輩方を見てきました。どんなに困難な時でも、逃げずに一生懸命に取り組んでいらっしゃる姿は本当に格好良かったです。私はそんな先輩方のことが大好きです。いつも思いやりがあっておおらかな先輩方をとても尊敬しています。私たちは先輩方が残してくださった伝統や、目には見えない「心」の部分もしっかり受け継いでいこうと思います。今は頼りない私たちですが、一年後には先輩方のように笑顔で卒業できるよう、何事も真剣に、あきらめず、努力していきます。

 これから進む道が違っても、この三年間ともに学び、ともに笑い、困難も一緒に乗り越えて培ってきた絆や思い出は、先輩方にとってかけがえのないものとなっていることでしょう。北摂三田高校で過ごした日々を力に、輝かしい未来を切り拓いていってください。

 いよいよお別れの時がまいりました。最後になりましたが、先輩方のご健康と益々のご活躍を心からお祈りし、送辞とさせていただきます。

平成29年3月1日

在校生代表 中尾 望結