みなみんの教え 〜偏差値20アップする魔法の習慣〜 
                                     (作なおみん
)        
毎週木曜更新

才能と努力

中間テストが終わり、1年生の部活動も本格的になってきた。今までお客さん気分で弓道部に参加していた紗保里も、朝練から夕方遅くまで練習に参加しなければならなくなり、袴姿と、3年生の久世彰(くぜ あきら)先輩がかっこいいという浅薄な理由で入部したことを後悔し始めていた。

体操服で、短い棒に巻きつけた強力なゴムを弓に見立てて引っ張りながら、自分でも格好悪い姿だと思うが、そこは武道だけに厳かな表情を作って「ブンッ」とゴムを離す。

一列に並び、真面目な顔でゴムを引っ張っている新入部員達の所へ、2年生の月城冴子(つきしろ さえこ)先輩がりりしい袴姿でやって来た。きれいな口元から真珠のような歯を覗かせて「あら、今朝は来てたの。遠藤さん。」と紗保里を横目で見て言った。

「2回朝練に遅刻しただけなのに・・」と思いつつ紗保里は「はい。」とゴムを引っ張った腕をぷるぷるさせながら答えた。

「みなみん、変なの。」現われたみなみんに紗保里は愚痴る。「美人で頭のいい人ってホントうらやましいよね〜。世の中不公平だと思わない?」紗保里は帰り道で見かけた、彰先輩と冴子先輩の仲よさそうな後姿を思い出していた。「冴子先輩って、いつも学年10位以内なんだって。しかも美人で部長・・。」

「さぼりちゃんさぁ。世の中、公平だとは思わないけど、そんなかっこ悪いこと言うなみん。まさか冴子先輩が全然努力もせず成績優秀で、弓道も生まれつき上手いなんて思ってないみん?」「そうかなぁ。頭の出来が違うのよ。」

「面倒くさがって、さぼってばかりの結果を、才能のせいにしてはダメだみん。もちろん持って生まれた違いはあるみん。すごい発明や発見をしたり、オリンピックに出たりするのは才能が必要かもしれない。でも、東大に行ったり、県大会で優勝したりするのに、才能はいらないみん。なぜなら東大の問題はほとんど高校の教科書から出るし、部活も努力すれば県大会で勝てるみん。
『才能の差』っていうのは、もうこれ以上努力できないと思うくらい努力した先に感じるものだみん!

いつになく真剣にみなみんは力説した。そして、いつもの段取りをはたと思い出した様子で、しれっと付け加えた。「これがみなみんの教え6だみん。」

「え?どれよ。」紗保里も負けずにしれっと尋ねた。

「聞いてた?『東大に行くのに才能はいらない。努力して高校の教科書を勉強すれば合格できる。才能なんて言い訳100年早いわ!人をうらやんだり、貶めたりする前に、自分が上がる努力をしろ!』だみん。」

「え〜。長っ!しかも、さっきと違うじゃん。」

「細かいことは気にするなみん。めんどうさぼりは、明日一番早く朝練に行ってみるみん。」

 みなみんが消えたスマホ画面を眺めながら、紗保里はまだ不満だった。「そんなこと言ったって、恵まれてる人はいるもんなぁ。それにしても、私、弓道部に入ったってみなみんに言ったっけ?」

 次の日紗保里は、いつもより1時間も早起きして、7時に弓道場に着いた。みんなが来るまでにまだ30分ある。冴子先輩が来たら、「おはようございます。ごゆっくりですね。」とでも言ってやろうかと思いながら弓道場のドアを開けた。すると射場の右手奥に人の気配を感じた。暗い隅を目を凝らしてみると、体操服姿でゴムを引っ張る冴子先輩だった

第6回