みなみんの教え ~偏差値20アップする魔法の習慣~
                  最終回
    (作なおみん)     
毎週木曜更新

「地球は遊び場」

「遊んでばっかりいるわりには、なんか元気がないみんね」

キッチンの棚の上から流しを見下ろしてみなみんが尋ねた。

スマホを棚の上において、紗保里はイチゴを透明なボールの中で洗っている。赤い宝石のようなイチゴが春の訪れを喜んで、くるくる踊っているみたいだ。王子猫の銀時朗は、キッチンテーブルの椅子の上で香箱を作っている。パウダーのような手触りの、柔らかく長い銀色の毛が、呼吸のたびにほんの少し波打つ。

「せっかく仲良くなった友達と、クラスが分かれちゃうかと思うとねぇ。」

「ふーん。・・・」みなみんはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。

「さぼりちゃんは、このイチゴはどうやって作られたと思うみんか?」

「はぁ?『寂しいだろうけど元気出してね。』とかなんとか、慰めの言葉を考えてるのかと思ったら・・。やっぱりみなみんは変なの。」紗保里はため息をつきながら、水道を止めた。

「まぁ、質問に答えるみん。」

「そりゃ、イチゴは農家の人が苗を植えて、育てて、収穫して、運ばれて、お店で売られてここにあるわけよ。」

「じゃぁ、その苗はどうやって作られたみんか?」

「イチゴの種を植えて作ったんじゃないの?それがどうしたのよ。」

「じゃぁ、その種はどうやって作られたみんか?」

「その辺に生えてるイチゴから取ったんじゃないの?」どうでもよくなってきた。

「その辺に生えてるイチゴはどうやって作られたみんか?」

「大昔から自然に生えてるんじゃないの。それがどうしたのよ。」うんざりした紗保里は、とげとげの言葉をみなみんに投げつけた。銀時朗が耳を立てて、頭を起こす。

「つまり、イチゴは人間が作ったんじゃないってことだみん。このボールも、水も、流しも、家も、全部、もともと自然界にあったものを材料にして、加工してるってことだみん。ゼロから人間が作り出したものはない。たとえば、化学の実験で、酸素を発生させたとき、過酸化水素水と二酸化マンガンを混ぜたけど、そもそも二酸化マンガンだって鉱山からマンガンを掘り出して加工する。いかにも人の力で作ったように見えるけど、そうじゃない。全て人間の作るものは自然界にあったものを利用してるってことだみん。」

「だから?」って感じで、眉を上げて口角を下げてみせた紗保里を無視してみなみんは続ける。

「物だけじゃないみん。土地だってそう。例えば大地主がいる、石油王がいる。国と国が、これは自分の領土だと主張して争う。でも、もともとは誰のものでもない。大昔から自然にそこにあった土地だみん。」

「だから?」今度は口に出して言った。

すると、みなみんはくるりと回って右手を上げた。紗保里がふと足首に温かさを感じて、下を見ると、銀時朗が緑色の大きな目でみなみんを見上げている。

みなみんの教え44『人間は地球上に生まれて、そこにある材料を存分に使って遊ぶ。そして、死んだ後は自然に返すものだ、と考えれば、世界は平和になり、人間は謙虚になれる。』自分の物だとか、自分の土地だとか、人間は何でも作り出せるとか思うから、争いが起こったり、思い上がって自然を破壊したりするみん。この地球にはいろんな材料が揃っている。さぼりちゃんがその気になれば、この地球上は巨大なおもちゃ箱になる。いろんなものを利用して、工夫して、加工して、思う存分遊べばいいみん。」

そう言った時、銀色のゲル状の物体がふわりと目の前を横切った。「あっ」と思った時には、飛び掛った銀時朗の前足が、みなみんの体を通り抜け、スマホを弾き落としていた。スマホはイチゴの浮かんだボールに落ち、紗保里が急いで拾い上げた時には、画面は黒くなっていた。タオルで拭いて電源を入れなおしても画面は黒いままだった。

みなみんは消えてしまった。

数日後、修理を終えて返って来たスマホに、紗保里は早速「みなみん変なの。」と呼びかけた。が、画面には何の変化もなかった。「みなみん変なの。みなみん変なの。」何度も何度も呼びかけたが、みなみんが現われることはなかった。

「最後の教えと私の悩み、みなみんはどうつながるって言おうとしたんだろう。」紗保里はやっぱり悩み続けるのだった。

    

1年間ご愛読ありがとうございました。ご愛読いただいた方の、人生の偏差値が少しでもアップしていればいいなと思います。

 

 

第50回