みなみんの教え ~偏差値20アップする魔法の習慣~ 
                                     (作なおみん
)        
毎週木曜更新

「六の宮の姫君」3

「六の宮の姫君が極楽に行けなかった理由があるとすれば、臨終の時、御仏の名を一心に唱えなかったくらいかなぁ。だって当時の姫君は、ずっと几帳の内に座って、歌を詠んだり琴を弾いたりするのが普通で、働いたり、夫を探したりできなかったでしょ。」紗保里は口をとがらせる。

「六の宮の姫君は自分から何かをしたいと望んだり、行動を起こしたりすることがなかったみん。いいことも、悪いこともしなかった。いつも回りに流されて、自分の人生を生きていなかったみん。だから極楽へも地獄へも行かず、中途半端にさまようことになったみん。」

「でもさぁ、それはその時代の社会通念や育て方のせいだし、しかも親が亡くなったり、男が遠くに行くことになったりしたことが原因であって、姫君のせいじゃないよね。」

「じゃぁ、さぼりちゃんは、姫君と同じ境遇に置かれた人は、みんな同じ道をたどると思うみんか?」

「みんな同じってことはないと思うけど・・。」紗保里は考え込んだ。

「ユング、フロイトと並んで有名な心理学者にアドラーがいるみん。今、『嫌われる勇気』っていう本やテレビドラマが話題になっているけど、そのアドラーだみん。ユングやフロイトが、トラウマや過去に原因を求める『原因論』に立つのとは対照的に、アドラーは『目的論』に立っているみん。」

「原因論と目的論?それと六の宮の姫君と、どう関係があるの?」

「今、さぼりちゃんが言ったのは『原因論』だみん。六の宮の姫君に罪はない、全て過去の出来事が悪いっていう『原因論』。でも、アドラーの『目的論』でいうと、姫君は不幸になることを選んでいる(目的にしている)ことになるみん。」

「不幸になることを目的にしてるって?何言ってんの?そんな人いる訳ないじゃない。」紗保里は眉を上げ、椅子の背もたれに体をあずけた。

「姫君は、乳母が紹介した典薬之助(てんやくのすけ)を夫にしたり、遠くに行った男に手紙を書いたり、使いをやったり、親戚を頼って宮仕えをしたりできたかもしれない。でも、しなかった。それは姫君自身が『変わらない』という決心をし、不幸になることを選んだからだみん。新しい環境や人間関係で、心を痛めたり苦労したりするよりも、変わらない生活をするほうが、姫君にとって都合がよかった楽だったということだみん。しかも、自らの不幸を武器に、乳母を心配させ、その言動を束縛しようとしているみん。」

紗保里は一瞬背もたれから体を起こして反論しようとしたが、そのまま黙って考えこんでしまった。そして、

「なんて厳しい心理学・・。」とつぶやいた。

「アドラーの心理学はある意味とても厳しい心理学かもしれないみん。でも、原因論に立つ限り過去は変えられないから、人が変わるのは難しい。不幸なのはしかたないってことになる。でも、アドラーの目的論に立てば、過去は関係なくなり、ライフスタイルを選びなおすことができるみん。
 そこで、みなみんの教え40
『トラウマや過去は関係ない。今の自分を変えようと努力すれば、未来はいくらでも変えられる。』

高々と右手を上げるみなみんを、紗保里は椅子にもたれたまま見つめていた。いつものように、「わかった。やってみよう。」という気には、まだなれなかった。

第46回