みなみんの教え ~偏差値20アップする魔法の習慣~ 
                                     (作なおみん
)        
毎週木曜更新

「六の宮の姫君」2

六の宮の姫君は、昔かたぎの父母に寵愛されて育てられた美しい姫であった。しかし、父母が亡くなると生活は苦しくなり、召使は暇を取り、乳母だけが残って姫君の世話を続けていた。姫君はどうすることもできず、昔のように琴を弾いたり歌を詠んだりして暮らしていた。

ある秋の夕暮れ、乳母は、「丹波の前司が姫君に会いたいと言っているので会ってみてはどうか。」と勧めた。姫君は不如意な暮らしを助けるために男と会うのは嫌だと泣いたが、いつのまにか夜毎に男と会うようになった。丹波の前司は顔かたちが美しく、やさしい人で、姫君の美しさに夢中になり、毎夜通ってきた。しかし姫君は、嬉しいとは一夜も思わなかった。

男のお陰で姫君の生活はよくなり、召使の数も増えていった。しかし、庭の枝垂桜が蕾をつけたころ、男の父親が陸奥の守に任ぜられ、男も一緒に陸奥の国へ行くことになった。男は5年経ったら帰ってくると約束したが、6年目の春が来ても都へ戻ってこなかった。

その間に姫君の生活は苦しくなり、召使は一人もいなくなり、住んでいた館も大風に倒れ、姫君は乳母と一緒に侍の廊(ほそどの)で雨露をしのいでいた。持ち物は全て売って、米や青菜に変え、姫君の着物や袴も身につけているもの以外は残っていなかった。姫君は琴や歌に気を晴らしながら、じっと男を待ち続けた。

その年の秋の月夜、乳母は「殿はもうお帰りにはならない。ついては典薬之助(てんやくのすけ)があなたに会いたいと言っている。」と話した。しかし姫君は「静かに老い朽ちたい。」と、その外は何も考えなかった。

男が、常陸の国でった妻と、京に帰ってきたのは9年目の晩秋だった。音が六つ宮の姫君の館を訪ねてみると、門も寝殿もことごとく無くなっていた。男は翌日から姫君を探しに、洛中を方々歩き回った。に

何日か後の夕暮れ、男はむら雨を避けるために朱雀門の前にある西の曲殿の軒下に立っていた。男の他には、物乞いらしき法師が一人、雨やみを待っていた。窓の中に、人の気配を感じた男は、ふと薄暗い格子の中をのぞいて見た。そこには尼が一人、破れた筵(むしろ)をまといながら、病人らしき女を介抱していた。男は一目見て、その女が六の宮の姫君であるとわかった。男が臨終の姫君のもとに走り寄ると、尼(乳母)は法師にお経を読んでくれと頼んだ。法師は姫に、「自分で阿弥陀仏の御名を唱えなさい。」と言ったが、姫は「何も、―何も見えませぬ。暗い中に風ばかり、-冷たい風ばかり吹いて参りまする。」と言って死んでしまった。

それから朱雀門のあたりには、女の泣き声がするといううわさが広まった。先の法師はこう言った。「あれは、極楽も地獄もしらぬ、不甲斐ない女の魂でござる。」 

「はぁ?何その話、全然釈然としない。六の宮の姫君は何にも悪いことしてないし、典型的な平安時代の姫君の生活をしてただけでしょ。たまたま不幸な出来事が続いただけなのに。悪いのは、帰ってこなかった男じゃないの。それなのに死んでからも、極楽に行けないなんて可哀想すぎる。こんな物語を書く芥川は女性に対して意地悪な人だと思う。」

話を聞き終わった紗保里は、不満をとうとうと語った。

「六の宮の姫君は、どうして極楽に行けなかったと思うみん?」みなみんは紗保里の反応を楽しむように質問した

 

第45回