みなみんの教え ~偏差値20アップする魔法の習慣~ 
                                     (作なおみん
)        
毎週木曜更新

「六の宮の姫君」1

2月15日が特色選抜(推薦入試)なので、14日は13時生徒完全下校である。大掃除が終わると、みんな一斉に帰り始めた。紗保里が電車を下りて家に向かって歩いていると、幼馴染の小林拓人が前を歩いているのに気がついた。「タクティー久しぶり。今日はチョコレートもらった?」  

「よぉ、放課後呼び出されたりしたらめんどくさいから、さっさと帰ってきたけど、朝、机の中に何個か入ってた。」

「モテる男は言うことが違うねぇ。」(そういえば拓人はイケメン御三家とか言われてたなぁ。)

「だって、後で返事するのが大変だし。変な匂いのする手作りチョコとかあるんだぜ。」

「モテるのも大変なんだねぇ。」

「で、お前は誰かに渡したの?」「ううん。」

「俺には?」そう言って不意にこちらを向いた拓人と目が合った。長いまつげに縁取られた大きな黒い瞳に、驚いた自分の顔が映っていた。

紗保里の鞄の中にはチョコレートが入っている。山陽百貨店で買ったヨックモックのチョコレート。昨日の放課後は遅くまで残って、深山志音君の机に入れようか迷っていたが、そのまま持って帰り、今朝、深山君の机を見ると、いくつかチョコらしきものが入っていたので、渡せずじまいだった。(せっかくだからタクティーにあげようか、いやいや一度ふられたみたいになってるし、タクティーはたぶん美奈代ちゃんが好きだし、変なにおいのする手作りチョコは夷川さんのかもしれないし、そうなると、すごく複雑な三角関係になるし、そもそも違う人にあげようと思っていたチョコだし・・。)

「えっ・・?あ、あるわけないじゃん。」軽口で返されると思っていたが、拓人は一瞬目を伏せて口角を上げ、黙って歩き出した。

「ねぇ、みなみん。あの時チョコを渡したほうがよかったのかなぁ。タクティーは私のことなんかただの幼馴染で、女の子として見てないと思ってたけど、どうなのかなぁ。」紗保里はチョコをボリボリ食べながらみなみんに相談する。

「さぼりちゃんは、どう思ってるみん?」「そうねぇ。嫌いじゃない人から好意をもたれると、好きになっちゃうもんじゃない?だから、タクティーでもいいかなぁって。」

「ほぉ、ずいぶん上から目線だみん。で、チョコを渡しにいくみんか?」

「ううん。今食べちゃってるし。」「はぁ?じゃぁ、どうやって気持ちを伝えるみんか?」

「そのうちタクティーが何か言ってくるんじゃないの?」にっこり笑ってハート型のホワイトチョコを口に入れる。

「さぼりちゃんは、彼氏が欲しいみんか?」

「まぁ、欲しいけど、あんまりがつがつ自分からいけないしさぁ。」

「うーん。まるで六の宮の姫君だみん。」

「ええ?お姫様のように綺麗で引く手あまたってこと?」思わず食いつく紗保里。

「違うみん。芥川龍之介の短編小説『六の宮の姫君』の主人公だみん。それはこんな話だみん。」

そう言ってみなみんはあらすじを語り始めた。

第44回