みなみんの教え ~偏差値20アップする魔法の習慣~ 
                                     (作なおみん
)        
毎週木曜更新

0か1

期末テスト2日目の試験が終わって紗保里が鞄に荷物を詰めていると、筆箱から消しゴムが落ちて転がっていった。斜め前の席に座っていた深山志音が拾って「はい」と手渡そうとしてくれたが、紗保里は立ちすくんだまま動けなかった。深山君の煙水晶の瞳に射すくめられてしまったのだ。すっと伸びた高い鼻梁、細い顎、長いまつげを上げると、きらきらの粉が振りまかれる。紗保里は金の粉を浴びながら、ぼんやり消しゴムを受け取った。

家に帰って「みなみん変なの」とみなみんを呼び出すと、「さぼりちゃん変なの。いつも以上にぼんやりして、どうしたみんか?」とみなみんが顔を覗き込んだ。

「はぁ~~~。『社会と情報』の試験勉強しなきゃ。」とため気をつき、薄ら笑いを浮かべ、上の空で教科書を取り出す。

「とうとうおかしくなったみんか?」紗保里の顔の前で両手を振るみなみん。

「おかしくなんかないよぉ~。
 みなみんの教え5
『前日のテスト勉強は、量が少なくすぐ終わる科目、得意科目からやるべし』のとおり、量の少ない『社会と情報』からやってるしぃ。ふふ。」

「そういうことじゃないみん・・・・。ま、まぁ、とにかく早く試験勉強始めるみん。」

「え~っとぉ。『コンピュータの内部では、高低2種類の電圧を1と0に対応させている。すべての情報を0と1の組み合わせで表すことができる。』はぁ~~。」斜め上を見てため息をつく。

「恋でもしてるみんか?」恐る恐る聞くみなみん。

「う~ん。そうかもねぇ。前から気になってたんだけどぉ、消しゴム拾ってくれた上目遣いの深山君がかっこよすぎてドキッとしちゃったのよねぇ。」虚空に向かって微笑みかける。

「恋をするのはいいけど、さぼりちゃんは0か1だからなぁ。」

「0か1って?コンピュータのように正確で賢いってこと?」調子に乗ってスキップする人に、ヒョイと足を引っ掛けるように、「未熟だってことだみん。」とばっさり切るみなみん。

「未熟な人間は、0か1か、白か黒かという単純な考えで全体を判断してしまうみん。すぐに夢中になったり、怒ったり、笑ったり。感情のコントロールが下手で、人間や物事を一面でしか見ない。さぼりちゃんみたいな人が増えるとポピュリズムに陥るみん。つまり、理性的に判断する知的な市民よりも、情緒や感情によって態度を決める大衆を重視し、その支持を求める政治家が出てくる。民主政治は衆愚政治に堕す恐れがあるみん。」

「はぁ?また話が大きくなってる。私はただ深山君がかっこいいって言っただけだよ。」

「じゃぁ、さぼりちゃんは、最近まきちゃんや柿沼さんや小林君と話してる?」

「ううん。だって私のことをいじめたり、わかってくれなかったり、ばかにしたりした人達だよ。付き合う必要ないでしょ。」

「無理して付き合う必要はないみん。でも、人を見るときに、一面だけでその人全体を判断してしまうと、見誤るみん。さぼりちゃんの気持ちだってすぐに変わるし、さぼりちゃんにだって悪いところと、ちょっとはいい所あるみん?」

「ちょっとはってどういうことよ!」

「みなみんの教え30人や物事を0か1かで見てはいけない。感情をコントロールし、いろんな角度から理性的に見ること。』そうしないと、よい人間関係は築けないみん。」眉間にしわの寄った紗保里の顔を見て、みなみんは付け加えた。「そんな女の子がもてる思うみんよ。」

「え?そうなの?」考え込む紗保里。まだまだ0か1から抜け出せないのであった。
第34回