みなみんの教え ~偏差値20アップする魔法の習慣~ 
                                     (作なおみん
)        
毎週木曜更新

いじめ対処法3

「孤独上等」と開き直って自分の足で立てば、無視もたいして痛くないことに紗保里は気づいた。部活に行けば先輩や他の部員はいつもどおり接してくれるし、家に帰れば地元の友達もいる。世界は広い。クラスだけが全てではない。心は浮かないけどね。

「もしも、物がなくなったり、意地悪なメール、暴言なんかがあれば、写真を撮ったり記録を残したりして、周りの友達、先生、親、警察に伝えればいいみん。」とみなみんは言ったが、そんなことはなく数日が過ぎた。

放課後、紗保里が廊下の掃除をしていると、網嶋美奈代ちゃんが「土曜日の模擬試験の後、うちでハロウィンパーティーするんだけど来ない?」と誘ってくれた。「クラスの子も来るの?」と尋ねると、「クラスの子と、ソフトテニス部の子を誘ってる。仮装して来てね」と笑顔で答えた。

参加しようかどうか最後まで迷ったが、「行ってみればいいみん。」とみなみんが耳らしき部分をほじりながらあくびをかみ殺して言ったので、「なんだその態度は、人が真剣に悩んでるのに!」と怒りに任せて来てしまった。

紗保里は口を開けて、つる薔薇が絡まったデザインの、高い門を見上げていた。向こうに白亜の洋館が見える。緑の芝生の上にはお菓子やケーキの載った白いテーブル。ハート型の赤い風船が、たくさんの白い椅子に一つずつ括り付けられ、青空をバックにふわふわ浮かんでいる。

「なんだこの豪邸!?映画のセットのような会場!」恐れ多くて背を向けようとした時、「遠藤さん、こっちこっち」と声がかかった。振り向くと天使が手を振っている。白い肌、ピンクの頬、金髪の巻き髪。天使の仮装をした美奈代ちゃんだ。しかたなくふらふらと中に入る。

紗保里は100均で買った、目の部分だけの青いマスクをつけていたが、他の女子達はマレフィセント、黒猫、魔女、看護婦、シスターなど、気合が入っている。男子は網嶋さんが準備した仮装衣装のテーブルに集まって、選んだりお互いの仮装を見せ合ったりしていた。

緑色のゴジラの口から顔を出しているのは小林拓人、フナッシーは大木源三先輩。二人とも網嶋さんと同じソフトテニス部だ。他には、ジャック・スパロウ、ウォーリー、頭にねじを刺したフランケンなど色々いる。パーティーが始まり、紗保里は端っこのテーブルでジュースを飲みながら、みんなの様子を見ていたが、美奈代ちゃんが突然大きな声で、こんなことを言った。

「ハッピーハロウィン!ここで、天使の私から素敵なカップルを紹介したいと思います。小林君、遠藤さんここに来て!」紗保里は飲んでいたジュースを噴き出した。あれよあれよと天使に引っ張られ、拓人と紗保里はみんなの真ん中に立たされた。視線の集中砲火で発火しそう。

「二人が内緒で付き合ってるから、クラスの雰囲気がなんだかギクシャクしちゃってるので、この際交際宣言したほうがいいかなと思って。」と美奈代ちゃんは続ける。

(いったい何を言っているのだ。新手のいじめか?)と紗保里はパニックになる。拓人は「ふざけんなよ!」と怒って向こうへ行ってしまい、美奈代ちゃんはこわばった笑顔を貼り付けたまま固まってしまった。場の空気は、驚きと、失望と、軽蔑に包まれ、一気に冷え切った。

するとそこに、一つの影が現れ、ゴジラの行く手をさえぎった。シルクハットとマントで仮装した深山志音だ。

「おまえのせいで、遠藤がクラスで無視されてんだよ。」

「はぁ、何でおれのせいなんだ。」

「お前達がこっそり付き合ってるから、みんな嘘つかれてる気がしておもしろくないんだよ。別に悪いことしてるわけじゃないからはっきり言えよ。」
「本当に付き合ってないし。なんでそんなことになってんだ?」ゴジラを被った拓人が憤慨する。

「写真がアップされてるのよ。」と言って、携帯を差し出したのは船越さんだ。拓人はそれを覗き込んで、「えー!」と声を上げた。紗保里もあたふたと近寄って画面を見た。画面には街灯の下に立っている紗保里に、拓人が頭を傾けてキスしている姿が映っていた。

「こ、これって!」紗保里は10月2日日曜日、公園で拓人と出会ったことを思い出した。

「これは、紗保里の抱いている猫を覗き込んでるところだよ。おれ達幼馴染だから幼稚園の時から紗保里んちの猫を知ってるんだよ。」拓人が目を丸くして説明する。

「そうなの?」みんながざわつく。

「こいつはただの幼馴染、おれは天使のようなかわいい子が好きなの。」と顎で紗保里を指しながら、拓人はクールに言った。

紗保里は(はぁ、なにそれ、なんで私が振られたみたいになってんの?)と思ったが、展開が速くて言葉が出ない。

「でも、拓人ファンがかわいそうだから、嘘ついてこっそり付き合ってるって紗保里が言ってたんでしょ?」とまきちゃんが紗保里をにらむ。そういえばまきちゃんから「10月2日何してたの」ってしつこく聞かれたことあったなぁと思い出す。

「そ、そんなこと言ってないよ。そもそも付き合ってないし。」紗保里はやっと言葉を搾り出した。

パーティーから帰ってきた紗保里は魂が抜けたようにぼんやりして、みなみんに事の顛末を語った。

「若さは、不誠実を許せないからね。小さな嘘や誤解でも人格を全部否定してしまうところがあるみん。それと、美奈代ちゃんはさぼりちゃんのためにパーティーを企画し、天使の仮装をして、みんなと仲直りさせようとしたんじゃない?」とみなみんは言った。

「そうかぁ。美奈代ちゃんがそんなこと考えてくれたのかなぁ。でも、誰が写真や嘘をばらまいたんだろう。」

第29回