みなみんの教え ~偏差値20アップする魔法の習慣~ 
                                     (作なおみん
)        
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いじめ対処法1

2学期中間テスト最終日、紗保里は「魚吹(うすき)祭り宵宮」に、まきちゃんを誘った。魚吹祭りは播州秋祭りの最後を飾る魚吹八幡神社のお祭りで、屋台、だんじり、獅子舞が出て、ちょうちん練りがある大きなお祭りだ。姫路南高校からだと自転車で行ける距離なので、以前からぜひ行ってみたいと思っていたのだ。

けれども「今日用があるから行けない。」とそっけなく言ってまきちゃんはすぐに帰ってしまった。紗保里は弓道部の練習の後、自転車に乗って帰ろうとしたが、来年のお祭りは中間テストと重なって行けないかもしれないと思い、ちょっとだけ見に行こうと夕日に向かって自転車を漕ぎ出した。

大津茂川を渡ったころから、地面を伝ってお腹に響くような太鼓の音が聞こえ始めた。宮田大橋のほとりには金銀の装飾を施した絢爛豪華な屋台が3つ夕日に映えて並んでいた。紗保里は土手の上で自転車を下り、海から川を遡ってくる風に吹かれながらしばらく見入っていたが、動悸を抑えながら自転車を押して屋台に近づいていった。

屋台の屋根の金色の龍や鷲の彫刻、引き回された赤い幕にぶ厚く施された源平合戦の刺繍、一つ一つ感動しながら眺めていると、後ろから「どうだ、きれいだろ?」と声がかかった。振り向くと青いはっぴを着た大木源三先輩だった。はっぴの下は裸で、まわしだけを着けているので、紗保里は目のやり場に困り、「せ、先輩。屋台を担いでるんですか?」と頭の上を見て言った。

「テストが終わって、すぐに参加したよ。ほら、肩がこんなに腫れて。」と大木先輩ははっぴを脱ごうとする。「た、大変ですね。気をつけてください。」と後ずさりする紗保里に「7時から魚吹八幡宮桜門前で、ちょうちん練りがあるから見て行けよ。おれも参加してるし。」大きな口を開けて屈託なく笑いながら先輩は言った。

制服のままで格好悪いけど、ちょうちん練りは魚吹祭りの最高潮だし、せっかくだから少しだけ見ていこうと、紗保里は自転車を置き、魚吹八幡宮に向かって歩き出した。明りがともった出店の続く通りは別世界のようで、一軒一軒眺めながら歩いていくと、前から網島美奈代が人ごみを抜けて現われた。私服を着た美奈代はすれ違った人が振り返って見るほど綺麗だった。「あれ、遠藤さん。学校から直接来たの?」

「そう。部活帰りに来たんだ。」

「そうなんだ。桜門ってどっちかなぁ?」「反対方向だよ。」

「えっ?そうなの。でもまだ時間あるから大丈夫だね。」そう言うと紗保里と一緒に歩き始めた。

桜門の近くに来た時、「あつ、ほらほら、みんなもう来てるよ。」と美奈代が指差した先に、クラスの5~6人が私服で集まっているのが見えた。紗保里が立ち止まったのは、その中にまきちゃんがいたからだ。「あっ、ごめん、私今日帰らないといけないんだ。」小さい声でそれだけ言うと、紗保里は急いで反対を向いて人ごみをかき分け、逃げ出した。

 

机に突っ伏してため息ばかりついている紗保里の頭を眺めながら、みなみんは沈黙していた。

「もう学校行きたくない。っていうか行けない。はずされてるし。」

「金曜日からほとんど寝てないみんね。いじめられてるみんね。」

「私何かしたかなぁ。最近おかしいと思ってたんだよね。」

声を立てずに紗保里が泣く。涙が机の上に小さな水溜りを作っている。

第27回