みなみんの教え ~偏差値20アップする魔法の習慣~ 
                                     (作なおみん
)        
毎週木曜更新

努力はずるい?

紗保里は猫を抱いたまま、しばらく小林拓人の壁打ちを見ていた。月明かりの下、ボールを追う、すんなり伸びたきれいな足、ラケットを振り切って打つ、締まった腕、少女マンガのように整った横顔、ふわりとなびく髪。女子達がときめくのも納得だと、紗保里は親戚のおばさんのような心境で、幼馴染の成長を眺めていた。すると、ボールを打ち損じてこちらを向いた拓人が、紗保里に気づいて近づいてきた。

「銀ちゃん、久しぶり。相変わらず見る人が五体投地するほどの美猫だなぁ。何歳になったの?」と、銀時朗の顔を覗き込み、愛おしそう耳の後ろをなでながら甘い声で話しかける。

「18歳よ。私たちより2つ上。」完全に無視された紗保里が、猫の代わりに答える。

拓人はそうかそうかと王子猫を紗保里から奪うように抱き取り、ひとしきり話しかけたり頬ずりしたり肉球を指でなでたりしていたが、銀時朗はもう十分だろうという様子で腕から降りて、金木犀の下に行ってしまった。

拓人は名残惜しそうに猫を見たまま、「お前何やってんの?」とぶっきらぼうに紗保里に尋ねた。「何って、銀ちゃんを探してここに来たら、あんたが壁打ちしてたってことだけど・・。そうだ、タクティー、今朝サンテレビに映ってたよ。」

「『ひょうごワイワイ』ね。俺、練習だったから、まだ見てない。」

「ええ?練習があったのに、こんな時間まで自主練してるの?」紗保里は(へぇ。タクティーって自分のこと『オレ』って言うようになったんだ。昔は『僕』だったのに。『僕』のがいいのに。)と、ちょっと距離を感じる。

「バックハンドの球が上に上がっちゃうから調整してた。」とバックハンドの素振りをしてみせる。

「すごい努力家だね。そういうとこ女子にかっこいいって言われるんだよね。」紗保里は随分差をつけられた幼馴染に、ちょっと嫌味を交えて言った。

「お前は今日、部活なかったの?」

「なかったよ。今日は家で模試の復習の課題をやってた。間違いが多いから直すところが多くてさ、時間かかちゃったよ。タクティーは頭いいから、勉強しなくてもすぐ出来ちゃうでしょ?そういうとこも女子にかっこいいって言われるんじゃない?」

「お前さぁ、さっきから言ってること、矛盾してない?」「へ?」

「だって、スポーツは努力するのがかっこよくって、勉強は努力しないのがかっこいいって言ってる。」

「へぇ?そうかなぁ。でも、がり勉ってかっこ悪くない?」

「なんかそんな風潮があるけど、本来、努力は大切で、自分を磨いて上に上ろうとする姿はかっこいいと思うぜ。勉強だけ、努力するのはかっこ悪いとか、ずるいというのは、足の引っ張り合いが入ってるんじゃないかな。」

紗保里は今までちょっと小ばかにしていた拓人が、途方もなく高みへ行ってしまった気がした。

話を聞き終えたみなみんは「友がみな われより偉く 見ゆる日よ 花を買い来て 妻と親しむby石川啄木」と、にやりと笑い、こう言った。
「みなみんの教え
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『スポーツも勉強も何でも、努力する姿がかっこいい。がり勉と揶揄(やゆ)するなかれ。』

第25回