みなみんの教え ~偏差値20アップする魔法の習慣~ 
                                     (作なおみん
)        
毎週木曜更新

かっこいいとは

体育大会は曇天の下、雨に降られずにプログラムの終盤まできたが、団対抗綱引きが行われている時、とうとうざぁっと降り出した。3年生にとっては最後の体育大会、しかも、フォークダンスを楽しみにしている生徒が多いので、みんな祈るような気持ちでテントから空を眺めていた。

15分程の中断の後、放送が競技再開を告げると、小降りになった雨の中、みんなはテントから飛び出し、中にはトラックにスライディングしてはしゃぐ数人の3年生がいて、体育大会は最後の盛り上がりをみせた。

紗保里達の青団は現在13点の大差をつけて、ぶっちぎりの総合得点1位。競技は、団対抗混合リレーを残すのみだ。

スターターピストルが響く。青団は第1走者からトップへ踊り出た。大木先輩の学ランの背中で青いリボンが舞う。ツバメの雛のように空へ向かって口を大きく開けた応援団の枯らした声、腕をぐるぐる回す団員達。

2位と5mほどの距離をあけて、バトンが女子の第5走者に渡った。第5走者は女子100m2位の柿沼さんだ。柿沼さんは絶妙のタイミングでバトンを受け取ると、すぐにトップスピードに乗って軽快に走り出した。アンカーが待つ最後のコーナーに差し掛かったとき、体重の乗った左足が泥で滑ってバランスを崩し、あっという間に左肩を下にして地面に倒れた。倒れた柿沼さんを飛び越えたりよけたりしながら、後続の走者が次々と抜いていく。柿沼さんは両手をついて立ち上がると、それでも全力で走り出した。結果は6位。しかもそれまで総合得点2位だった橙団が1位だったため逆転されて、青団は総合優勝を逃した。

大木先輩は青団員の前に立ち「準優勝でもすばらしい。みんな力を合わせてよく頑張った!」と言ったが、放心したみんなの拍手はまばらだった。柿沼さんが転んだのは、雨に濡れた地面に、面白がってスライディングを繰り返したので、トラックが滑りやすくなっていたからだった。

閉会式が終わり、テントの撤収もようやく終わって紗保里のクラスも教室に向かってぞろぞろと帰りだした。柿沼さんは下を向いたまま、黙って一番後ろからついて来ていた。体操服の左側には白く乾いた泥がこびりついている。誰も話しかけるものはいない。紗保里は球技大会での柿沼さんの仕打ちを思い出し、いい気味と思ったが、事が重大で、あまりにも不運なことだったので、ちょっとかわいそうに思い、普通に振舞うのもはばかられた。

グラウンドの端に差し掛かったとき、右手で持ったスポーツバッグを肩にかけた深山君が立ち止まって右肩越しに振り返った。周りを歩いていたクラスメイトも自然に足を止める。柿沼さんもビクッと足を止めて顔を上げた。夕日が深山君の彫りの深い横顔を照らす。

「柿沼が気にすることないって。」

それだけ言って、深山君はゆっくりと生徒昇降口へと歩き出した。まわりの生徒達もぞろぞろと後に続く。柿沼さんはその場で立ち止まったまま下を向いていた。夕日に赤く染まった涙が2粒、きらりと落ちた。

話を聞き終えたみなみんは、ため息を一つついて言った。

「みなみんの教え20
『かっこいいとは、他人のためにするやせがまんのこと』だみん。」

第22回