みなみんの教え 〜偏差値20アップする魔法の習慣〜 
                                     (作なおみん
)        
毎週木曜更新

人を呪わば・・1

「ピッ!」笛の音に急き立てられ、紗保里はうろたえながらバレーボールを打った。ボールはネットの上端に引っかかり、バウンドすると味方のコートにボトリと落ちた。「ピー!」試合終了の笛が鳴る。紗保里は顔を上げることもできなかった。球技大会の3回戦、対戦相手の2年生バレー部員は明らかに紗保里を狙ってきていた。しかも最後のサーブまで失敗した。自分のせいで負けた。

校門を出た紗保里は泣き声でみなみんを呼び出した。「泣いてる?どうしたみん?」
「うぇっ・・。」涙と鼻水がどっと出てきた。「き、きたないし、ぶさいくだみん。」
「ぶさいくって、ひどい。うえぇぇ。」ますます不細工になる紗保里。
 ぐちゃぐちゃの顔でしゃくりあげながらみなみんに訴えた話は次のようなものだ。

球技大会のメンバーを決めるとき、バスケットボールに手を上げていた紗保里だったが、人数が多かったので、苦手なバレーボールに出ることになった。1回戦2回戦はなんとかしのいで勝ちあがったが、3回戦の対戦相手の2年生チームは紗保里ばかりをねらっているようだった。球技大会は18点先取の特別ルールだが、1617でリードされた紗保里のチーム。そこで相手はサーブを大きくコートアウトし、1717になり、紗保里にサーブが回ってきた。

「そこで失敗したみんね。」

 「そうなの。私は試合中『ボールよ、来るな来るなって』ずっと祈ってたけど、バンバンボールが来るし、最後のサーブもなんで私にまわって来るかなって。でもそれだけじゃないのよ。あとで牧(まき)ちゃんがね、牧ちゃんていうのは同じクラスの伊藤牧子(いとうまきこ)っていう友達なんだけど、『柿沼さんが、相手チームのバレーボール部の先輩に、紗保里をねらうように言ってたよ。それに、紗保里がサーブを打つとき、『はずせ』って小声で言ってたよ』って教えてくれたの。同じクラスなのにひどくない?」

「ふーん。まぁ、こう言っちゃなんだけど、客観的に考えて、さぼりちゃんが失敗したのには、柿沼さんの告げ口や呪いは関係ないみん。」

「そんなことないよ!」「告げ口しなくても相手はさぼりちゃんを狙ったし、呪わなくてもサーブは失敗したみん。」

「それは、わたしが下手だからってことでしょ。私は柿沼さんがひどいって言ってんの!!」

「柿沼さんや相手チームを恨んだり、憎んだりする気持ちはわかるみん。でも、そればっかりじゃ成長しないみん。」
「うるさい!なんで私が非難されるわけ?私は被害者なのよ!みなみんなんか消えちゃえ!」紗保里は携帯の電源を荒々しく切ると、泣きながら駅に向かって歩いた。

それから3日間、紗保里はみなみんを呼び出さなかった。いやもう、金輪際呼び出すものかと決意していた。
 7月18日海の日、紗保里は弓道部の練習試合で、東洋大学附属姫路高校の弓道場に来ていた。1年生はやっと袴は穿けるものの、試合に出るなど夢のまた夢、「当たぁりぃ」の声出しと、矢の回収に追われていた。

紗保里が看的所(かんてきしょ)から射場の横に戻ってくると、次の射に備えて控えてる冴子先輩が、東洋大姫路の射を食い入るように見つめている姿に足を止めた。ぴんと張り詰めた空気に、動くのもはばかられ、そこに立ち止まったまま冴子先輩の斜め後ろから射場の様子を見ていた。「大三」から「開」へ、気がはりつめて、自然な「離れ」へ。その瞬間、冴子先輩が何かつぶやいた。「残念」矢は的を外れ、「あづち」に「ざっ」と刺さった。

「ほら、冴子先輩も『はずれろ』って呪ってるじゃん。」紗保里は鼻で笑って冴子先輩の冷たく美しい横顔を眺めた。射手が2本目の矢をつがえる。「開」から「離れ」へ。

その時、冴子先輩の薄い唇が小さく「当たれ」とつぶやいた。

第14回