兵庫県立白鷺工業高等学校


閉校に寄せて

17代 校長 荒谷 冨士男

輝かしい歴史を閉じるにあたって

 輝かしい伝統のある兵庫県立白鷺工業高等学校は、平成18年3日末をもって開設61年間にわたる歴史を閉じることになりました。
 本校は昭和19年兵庫県立姫路工業学校内に兵庫県立第二姫路工業学校として創設されました。昭和23年兵庫県立白鷺工業高等学校と校名を変更、昭利25年兵庫県立姫路工業高等学校と兵庫県立白鷺工業高等学校の校名を姫路工業大学附属高等学校と改称されましたが、昭和40年兵庫県立白鷺工業高等学校と校名を再度変更されました。
 定時制の工業高等学校として校訓に「自主、信愛、勤勉」を掲げ、校歌に「夕べに仰ぐ白鷺城 けだかき姿友として 掲ぐる理想とこしへに学びの道に進まんわれら」と詠い、働きながら学ぶ志を高く保ち、勤労と勉学の両立を堅持してきました。本校は開設以来、歴代校長、職員のご尽力と保護者の方々や同窓会(仰星会)、地域の皆様のご支援によって、この懐かしき学び舎を4,200余名の卒業生の方々が青春の思い出を胸に巣立っていかれ、有為な人材として地元はもちろんのこと全国の産業界をはじめ、各分野で活躍されています。
 課外活動では、柔道部、剣道部、陸上部、野球部等の全国高等学校定時制通信制体育大会出場、全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表大会出場と大活躍してきました。また生徒会を中心に地域の独居老人宅約300戸に正月用もちの配布、西はりまリハビリテーションセンターとの交流・バリアフリー用具の寄贈など夜間定時制高校ではめずらしい地域貢献活動を実施し、若者の心の教育を継続してきました。多様な生徒を受け入れ、授業・実習・部活動・学校行事を行い、教職員や生徒同士との人間的なふれあいの中で生徒は成長し、学校を心の居場所としていました。学校が無くなったことを、多くの卒業生・保護者の方々が非常に残念がっておられることと思います。
 しかし、近年の急激な社会の変化と生徒数の減少によって、兵庫県では平成12年「県立高等学校教育改革第一次実施計画」が決定、定時制高校の再編・統合が実施され、平成15年度から本校は生徒募集停止になりました。
 卒業生の方々が青春の日々を過ごされた校舎は県立姫路工業高等学校に引き継がれますが、県立白鷺工業高等学校の足跡を、正面玄関左側に記念碑を建立し、本館2階には記念室として「仰星会」の部屋を設置し思い出の資料を永く残します。全ての卒業生、旧職員の方々に一度は訪れていただき、青春の日々を思い起こして、共に語っていただく場となれば幸いです。
 終わりになりましたが、開校から閉校まで本校教育へ多大のご支援ご協力を賜りました皆様に厚く御礼申し上げます。そして、本校に集われた全ての方々のますますのご健勝とご活躍を祈念いたしまして閉校の挨拶とします。


仰星会 会長 尾上 誠一

60年の歴史と4200名の重みを明日の社会へ!

 いよいよ母校も創立60有余年の歴史を閉じるときがやってまいりました。
 第2次世界大戦の戦火の最中、県立第二姫路工業学校として終戦直前に開校した母校は、幸いにも被災を免れた木造校舎の裸電球の下で授業が始まりかけたのが終戦直後のことだそうであります。以降戦後の混乱の中にあって、学制改革こより県立白鷺工業高等学校となり、2年後には姫路工業大学附属高等学校第2部(25年4日)へと校名が変わり、昭和40年4月には元の白鷺工業高等学校へと戻りました。時代背景に合わせての学科新増設が行われ、昭利40年にはピークで650名の生徒数を数えた時代もありました。40年代に全国に蔓延した学園紛争の余波を受けたことも今となっては全く懐かしい思い出であります。
 戦後大混乱の時代、祖国日本の再興の旗手として青雲の志を抱き、向学心に燃え昼間の勤務を終えて通学、途中で挫折した友達も多くある中、卒業した同窓生は61年間で4,200余名を数えるに至っております。そしてそれぞれが4年間培った『夜学魂』は地道ながらも社会の発展に貢献したことは疑いもなく、大いに誇るべきことであったと思います。
 また閉校が決まった近年には、後輩諸君が教職員と信頼の絆で築かれた師弟愛の中から、ハンディを持ちながら他校に誇る文化、社会、スポーツ活動で遺憾なく実力を発揮され、母校の名を 一躍高めていただきました。活躍された後輩の皆さん本当にありがとう。また創立以来、我々卒業生の面倒を陰に陽に導いていただいた教職員の皆さん、そして学生生活を支えていただいた保護者と職場の皆さん、本当にありがとうございました。
 開校後は「仰星会」という、同窓生と元の教職員による組織が唯一の拠りどころとなります。しかし、どなたが命名されたのか知りませんが、「仰星」とは、なんという素晴らしい我々にピッタリの名前なのでしょうか。最後の卒業生をはじめ、まだまだ若さあふれる同窓生や部活動のOB会、クラスの同窓組織があることなどを考えれば、先輩が残していただいた貴重な財産を有効に使わせていただき、年に一度の同窓会を合同で『白鷺祭』として開催することを提案したいと思います。そこからは年代を超えて、同窓生としての絆や情報交換を通じて、白鷺工業高等学校卒業生ならではの友好の輪が生じることを望みます。そして「仰星会」の存在が、社会にとって有形無形の働きをもたらすことを祈っています。どうか皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げてご挨拶といたします。