先端鉄鋼材料TRIP 鋼の-自動車用鋼板の開発に新しい指針を示す
-特性をその場中性子回析で解析
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発表日(連絡)
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平成30年2月26日
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担当課
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兵庫県立大学 姫路工学キャンパス
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電 話
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079-266-1661
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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)J-PARC センターのステファヌス・ハルヨ研究主幹、公立大学法人兵庫県立大学(学長
太田勲)の土田紀之准教授、一般財団法人総合科学研究機構(理事長 横溝英明)中性子科学センターの阿部淳研究員、国立大学法人京都大学(総長 山極壽一)のゴン・ウー任期付研究員らの研究グループは、J-PARC
註1の物質・生命科学実験施設(以下、「MLF」という。)に設置している高性能工学材料回折装置「匠」註2(以下「匠」という。)を用いて、長さ5cm
のTRIP 型鋼試験片が千切れるまで引っ張りながら、中性子回折測定を実施し、TRIP 鋼が高強度であることの原因を解明しました。
TRIP 鋼は、外から力が加わった場合に組織構造が変化し「相変態する」という特徴を持つ材料で、衝撃吸収特性に優れているため、自動車などの構造部材に多く用いられています。解析の結果、引っ張る際にTRIP
鋼の内部で起きる相変態で「残留オーステナイト」から生じる「マルテンサイト」が、TRIP 鋼の強度向上に大きく寄与していることを証明しました。また、炭素含量の重量比が0.2%と0.4%のTRIP
鋼で同じ引っ張り実験をしたところ、この違いは相変態による強度変化には影響しないことも証明しました。TRIP 鋼の中で変形の際に起きる組織変化の挙動を定量的に詳しく解析したのは、透過能力が大きく、回折で原子配列を見るため、試験片の平均的な結晶構造の測定に応用できる中性子を用い、さらに、「匠」を利用し、試験片の変形試験を止めることなく連続して中性子回折実験ができる手法を開発した本実験が世界で初めてです。
TRIP 鋼で起きている現象の理解が深まれば、それを基に数値計算の高度化も可能になり、より優れた特性を持つTRIP 鋼により自動車の軽量化と衝突安全性の向上に貢献できると考えています。
本成果は、2017 年11 月9 日発行の英科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。
プレスリリース(PDF300KB)
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